救いの夢から償いの未来へ
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ていることから聞く必要のないことだった。四葉はそう思っていた。
「ええ。自分からペラペラと話してくれたわ。自分が助かるためだけにあなたを唆して、その気にさせてこんな旅を仕組ませたって」
「えっ……?」
四葉が小さくだが驚く。あれは自分から持ち掛けた話だ。彼がいなくても、何か別の人間を用意するなりして計画は動いていた。思わず言葉を止めて考える四葉に、涼香は首を振った。
「……なんであいつがそんなことを言ったかはわからないけど。あんたが子供一人に唆されたくらいで動くような衝動的な性格してないことくらいわかってる。ただ、あの子達にはそういうことにしておいて」
何故、彼はそんな嘘を涼香達に話したのだろうか。自分の心臓を狙った時の千屠の殺気は本物だった。彼は彼らしく、千の命を屠る者として自分も涼香のことも殺そうとしたはずだ。
(彼が僕の罪を被ろうとした……?いや、まさか。それは彼という屠殺人への侮辱、かな……)
真実はわからない。ただはっきりしているのは、自分には彼の罪を赦してあげることなど出来なかったばかりか更に罪をかぶせて死なせてしまったということだ。そう思うと自然と瞳に涙が溜まり、自分が千屠の死を悲しんでいることを理解した。
「……ごめんよ」
「何、今更」
「僕は……君が閉じこもった時、弟の死が悲しいことは理屈ではわかるけど、そこまで落ち込むなんて思ってなかった。塞ぎ込んで誰とも話さなくなるなんて想像もできなかった。君の気持がわからなかったんだ。でも……そう、こんな気持ちだったんだね」
ぱたりぱたりと、四葉の手に涙が落ちる。自分が悲しいという気持ち、でも悲しむ権利などないのではという罪悪感。そしてそれでも止められない感情。涼香が塞ぎ込んだ時の恐れとは全く違う感情に、四葉は声を上げずにただ雫を落とす。
涼香も、自分の弟の死を想ったのか、少しだけ顔を赤くして瞳を滲ませた。でも、既に向き合う覚悟を済ませた彼女はそれを軽く拭って。これからの話をする。
「……旅は続けるわ。明季葉や巡の意志も聞かないといけないけど……少なくとも、ヒトモシやヘルガーとの約束は果たす必要があるから」
この旅の為に涼香が檻から出した二匹のポケモンが抱える人間への復讐は終わっていない。それを果たすのは、涼香の責任だ。巡や明季葉がまだ旅を続けるというのなら、それを引率者として見届けることもまた、罪を背負って生きる為にやらなければならない。それは四葉によって操られた強制的なものではなく、既に涼香自身の意志だ。
「私は弟の死を、昔応援してくれた人への裏切りを背負って生きる。だから四葉も……千屠の死を悲しいと、それが自分の罪だと思うなら。彼への贖罪として生きて。チャンピオンとしてこの世界を良くしてあげて」
「……うん、
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