救いの夢から償いの未来へ
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つ死んでもおかしくないような病人だった。治療にはたくさんのお金がかかって、それでも意味がないかもしれなかった」
「?」
唐突に語り始める四葉に千屠が首を傾げる。
「今はチャンピオンの地位にいるけど、君の言うとおり人を殺して無理やり手に入れた結果論さ。僕は両親の財産を食いつぶして、倒れる度につきっきりで看病をしてもらって迷惑をかけて、周りに気味悪がられて生きてきた。昔は、こっそり薬を飲み忘れて死んだ方がずっと両親を幸せに出来るんじゃないかと思っていたよ。でも、死ぬのは怖かった。そんな僕を、両親とたった一人の友人が赦してくれたよ」
「……殺したのって、その友人ってやつ?」
「当たらずも遠からずだね。やはり君は察しがいい。……だから、人に迷惑をかけ続けた人殺しだって、赦されたっていいはずさ。周りや君がどう思おうと、僕はそう思う。だから君が、僕のお願いに協力してくれるなら、今までの君の罪を全て赦してあげる。君の免罪符になってあげる」
「……あはっ。お姉さんって、変な人だね」
少年は子供らしい笑顔を見せる。この顔だけ見れば、彼が殺人鬼だと言っても信じられないだろう。
「まあ、許したければ勝手に許せば? 別に姉ちゃんが俺をどう思おうと俺はどうだっていいからさー」
「……契約成立だね。もう一度言っておくけど、僕が殺してはいけないと言った人は決して殺してはいけないよ」
「……うん、わかった」
「さて、じゃあ君の名前を聞いてもいいかな?まだ聞いていなかったからね」
「セントだよ。でも、あんまり名前で呼ばれるの好きじゃないからさー、適当にあだ名つけてよ」
少年の声が気まずそうに曇る。四葉は小首を傾げた。
「何故かな? 嫌な思い出でもあるのかい?」
「……俺、末っ子でさ。物心ついた時から家の中で一番いやな仕事ばかりさせられてて。小銭稼ぎだけしてくれればいいって言われた育ったんだ。それに嫌気が差したからダチと一緒に旅に出たんだけど」
人を殺しても何の罪悪感もなく笑う少年が、心の底から辛そうな顔をする。できれば、思い返すことすらしたくなさそうに見えた。
「なるほど、小銭ね。それはいけない。名乗りたくなくなるのも納得だよ」
四葉は外国にセント、という硬貨の単位があるのを知っている。一秒少年を撫でる手を止めて考える。
「なら、僕が君に相応しい名前を挙げよう。今日から君はこの国の名前で千屠だ」
「……変わってないじゃん」
「いいや、きっと気に入ってくれると思うよ」
四葉が自分のトレーナーカードを開き、千屠という文字、そして文字の意味を教える。
「千もの命を当然のように屠る。人々が小銭を消費するのを気にしないように。君にぴったりの名前だと思わないかい?」
「……いいね。それ。ダチにも聞
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