暁 〜小説投稿サイト〜
Blazerk Monster
そして少女は業火と為った
[1/6]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
 ジムの最奥へと走る涼香が目にしたのは、一匹の獣が引率トレーナーの体を引き裂く瞬間だった。左肩から右の腰までを斜めに一閃、巡の、一人の少年の体から血を吹き出す。
 間に合わなかった。また自分の過ちが罪のない少年の命を奪ってしまったという喪失感が胸を焦がす。

(巡……ッ!!)

 それでも確実に千屠を止めるために声は上げない。口の中を切って血の味が滲むほど憎悪を噛みしめて近づく。
 ──だが。巡の身体は朽ちることなくスライムのように再生する。それがどういうことなのか涼香にはわからない。でも、巡達はその現象を受け入れ利用しているようだった。
 なら、そこへ疑問を呈して時間を使うようなことはしない。三人を信じ、千屠を倒すためヘルガーの炎を叩きこむ──

「はっ、そんなに当たらないっての!」
「オオッ!!」

 挟み撃ちにされた状況を利用し、千屠とオオタチは身軽な動きでヘルガーと巡達の中心に位置を取る。思い切り火炎放射を撃てば、三人に炎が襲い掛かるように。

「……!!」
「ヘルガー、止まって!」

 人間のことなど気にしないヘルガーは構わず炎を放とうとしたが、涼香の制止よりも先に炎を止めた。

「あれ、人間嫌いのヘルガーって聞いてたから構わず撃つと思ったけど……いや、だからこそかなあ?あそこには人間二人がいるけどもう一つは人間っぽいポケモンだもんねえ?」
「……どういう意味」
「まあ、前座の話はいいや。それで涼姉は今すぐ俺を殺す? 確か、自分の罪を贖うんだよね?」
「あんたには関係ない!」
「それがあるんだよ。言ったでしょ? 計画通りだって。本当の意味でこの旅を仕組んだのは、俺なんだよ」
「仕組んだ……!?」

 この旅を計画したのは四葉のはずだ。チャンピオンとしてこれからのトレーナー達が安全に旅を送れるようにするための制度に自分を組みこみ、人との繋がり立って堕ちる友人を立ち直らせるために四葉自身を悪役にしてまで自分の怒りを煽りつつ振る舞う。それを計画できるのは自分を想ってくれた彼女だけ。なのに彼は自分が仕組んだと言った。

「そうそう。巡君達だって気になるでしょ? 自分がどういう存在なのか」
「それは……」
「……大人しく話すなら、懺悔を聞いてあげるわ」

 涼香はこらえるしかない。後で四葉に聞くことが出来ればそれで済むことだ。だが、もし四葉の命が助からなければ。自分だけではなく、三人にまで一生消えない心の傷がついてしまうかもしれない。それが千屠の狙いだと分かっていても、一度話を聞くしかない。

「といっても、そんなに難しくないし長い話じゃないけどねー。そもそもの始まりはさ。奏海君のお兄さんを俺が殺しちゃったことなんだよ」

 千屠は語り始める。まるで夏休みの絵日記を読み上げるような、軽々
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ