そして少女は業火と為った
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そんなんじゃ俺を傷つけることさえできないって」
「……さっきも言っただろ?」
ハッとして千屠が涼香の方へ向き直る。黒い炎はほとんど抑え込み、後数太刀入れればヘルガーを切り裂くことが出来る。だが千屠は思い違いをしていたのだ。
涼香がかつて旅をした時に連れていた相棒が、今さら彼女に手を貸すなど他人との関係は都合が悪くなったら切り捨てる彼は露ほども思っていなかったのだから。
「ゴウカザル……!? まずい、ダチ!」
千屠が涼香から意識を反らした隙に、頭にオレンジ色の炎を聖火のように灯す大猿の火炎ポケモンが。炎を切り裂く隙を縫って突進し、とぐろを巻くオオタチの真正面に立ちはだかる。
「『インファイト』!!」
千屠が意識を逸らさず涼香に集中していれば突っ込んでくるまでの間に何か対策を打てただろう。だがもう遅い。小細工なしの無数の拳がひたすらにオオタチの体を打ち据え、吹き飛ばす。
このゴウカザルは、昔涼香の相棒だった。最初の旅の最初からずっと一緒にいて、最後の最後で信じ切れず。涼香が裏切ってしまった、相棒だった。それでもゴウカザルは、涼香の元へ戻れると信じて、涼香が戻ってくれると信じて、四葉と共に待っていたのだ。
「……人の関係は不要になったら捨てればいい。同感ね。私が一年引き籠ってたのも馬鹿らしいし、そんな私の為に気を病んであんたの口車に乗せられる四葉も馬鹿よ。でも……それでも私達は捨てられない。それが自分の枷になったって、それでも大事な人の気持ちを背負い続ける……恩も、怨もね」
自分が犯した罪から逃げようと、嫌な関係を断ち切ってしまったことが四葉を苦しめ、この惨劇を生んでしまった。そして大切な人との関係を切り捨てなければ、またやり直せるはずだ。新しい人と繋がり、過去を乗り越えられることだってできる。涼香はこの旅で、そう確信した。
「だから私は、あなたを殺す。自分の為だけに他人の気持ちを利用したあなたを私が殺して……全ての罪を、私が背負う!!ヒトモシ、ヘルガー!!」
「もしぃ……!」
「ルガアアアア!!」
オオタチが立ち上がり、千屠の元へ駆け寄ろうとする。だがそれをゴウカザルが許さない。尻尾を押さえつけ、オオタチはそれを蛇のようにうねってぎりぎりで躱す。勝負こそつかないが、目の前のゴウカザルへの対処に必死なオオタチは、千屠の助けに入れない。
「……何それ? 自分だけの為に殺すか、自分が人の想いを背負って殺すかだけの違いにしか聞こえないけど? それで正当化出来るとか本気で思ってるの?」
「……思わない。私は自分の犯した罪を償う。弟を殺したことも四葉を傷つけたことも、巡達をこんな目に遭わせたことも……あんたを殺したという罪も、私が背負う」
「なーにそれ、意味わかんない。ホント、バ
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