そして少女は業火と為った
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に劣悪に苛烈に悪逆に、恨まれて憎まれて蔑まれて怒られて罵られて疎まれて裏切られて絶望されるような!そんな、ただの怪しい辻斬りじゃない、色んな人の記憶に残る、邪悪な存在になってみたかったんだよ!!千屠の字が相応しい本物の悪党にねぇ!!」
……狂っている。この場の全員がそう思った。自分の名前の為に、特別な思想や理想もなくただ悪党になりたかったと中身のない『有名人』になりたいという幼子のような夢を、彼は裏切って殺すことで叶えようとしていると叫んだ。
「……そう。なら、この場であんたを殺してから私は罪を償う。悪いけど、そうさせてもらうわ」
こんなのは、もう終わらせなくてはいけない。友人と、これからを生きるトレーナー達の為にも。涼香はその決意を込めて宣言した。
「あは、それ何に対する悪いなの?……まあ、もうどうでもいっか。この場で君ら全員殺して、念のため四葉姉ちゃんにも止め指しちゃえば俺はもう自由だからね」
「……そうはさせないわ。私は四葉と罪を償う。その為に、この子たちを見届ける。例え何を言われようと……そう決めたから」
涼香の心が黒く燃える。自分の弱さが生み出したこの惨劇に、それを利用する千屠の暗い怒りを、胸に抱きしめたヒトモシが熱を伴う煉獄の炎に変える。それがヘルガーの体を包み、三つ首のケルベロスのような怪物へとなり果て。どす黒い炎が空間を支配する。
「随分かっこよさげだけど……俺とダチには効かないもんねー!!ダチ、『居合斬り・影打』!」
「オオンッ……!!」
オオタチが長い体で蛇のようにとぐろを巻く。前の戦いではその体勢からばねのように体に勢いをつけることで鋭い居合斬りを放ったが、今度は態勢を変えない。体に隠れた鋭い爪を振るうことすらしない。
だが、四葉を貫きまた過去に幾重もの命を奪った影の爪が。実際の居合斬りと同じ速度と鋭さを持ってヘルガーの炎を切り裂いた。何度炎が迫ろうと、常に居合の態勢から放たれる影の爪が全てを切り裂く。
影の爪が防ぐだけでなく、草刈のように炎を散らして涼香やヘルガーへと迫ろうとする。涼香、ヒトモシ、ヘルガーが三位一体となって放つこの攻撃は他の手を加える余裕などない。
「恨まれるのは慣れてるんだよね。復讐だのなんだって突っかかってきたやつを数えきれないくらい返り討ちにしてきた俺たちにそんな付け焼刃が通じるかよ!!」
千屠は叫ぶ。数多の人をポケモンの命を奪った殺人鬼として。だがその頭を冷やさせるように――千屠の顔を、『水鉄砲』が撃ちつけた。思わず振り向くと、巡が手のひらをまるでアリゲイツの口のような形に変え、『水鉄砲』を放ったのがわかった。
「俺が人間じゃなくてポケモンだって言うなら……こういうことだってできるんだろ?」
「あっそ。だから何?
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