巡狩執行
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」
オオタチの爪が黒き輝き伸びる。それは一切の躊躇なく奏海の心臓をまっすぐに貫こうとしていた。人間に見切れる速度ではないそれは冷静さを失った少年の胸を貫く。
「ぐうっ……ああ!」
「巡!?」
それは再び、巡を切り裂く。巡が奏海の体を大きく突き飛ばして無理やり避けさせたのだ。今度は倒れない。苦悶の表情を浮かべながらも胸を貫かれたまま意識を保ち、なんとか影の爪を掴もうとする。
「えっと……色々と何やってんの? まさか人間じゃないパワーがあるから俺に勝てるとか少年漫画的な展開が出来ると思ってる?」
『シャドークロー』の効果が消え、掴もうとした影が消える。栓を抜いたように巡の身体から濃紫色の液体が漏れ出した。それはもはや、人間の血の色ではない。
「奏海……笛を、吹いてくれ。明季葉ちゃんは……俺の後ろへ。絶対、傷つけさせないから」
「……!!」
なりふり構わず、巡を死なせないようにフルートを奏で始める奏海。明季葉は混乱しつつも、巡の声に頷く。
「うぷっ……うははっ、ねえ何言ってるかわかってんの? 傷つけさせないって、正気? 興奮で正義のヒーローでも気取っちゃってる?そういうのほんとウザイからやめてよね。ぶった切りたくなっちゃうからさあ!『アイアンテール』!」
鋼の鋭さを纏った尻尾が真剣のように振りぬかれ、巡の右腕を肩から斬り落とす。巡は苦痛にもがきながらも、足で落ちた腕を拾い上げて。ぐちゃりと音を立てさせて、スライムか何かのようにちぎれた腕をくっつけた。奏海がさらにフルートを吹き続けると、噴き出る血は止まる。
「へっ……何してる何言ったって、子供かよ?」
「あ?」
千屠が巡達に向けた言葉を真似るように挑発すると、わかりやすく額に青筋を浮かべた。
「お前のオオタチはどれだけ強くても、斬ったり体当たりすることしかできないんだろ?……だったら、俺は負けない。二人のことも、傷つけさせない!」
「馬鹿だなあ、さっきの奏海の言葉で察しがつかないの?奏海はお前の正体について知っててずっと黙ってたんだよ?お前を兄と呼んでたのは演技で、本当は代用品としか思ってないってわかるよね?女の子はともかく、そいつ守る意味なんてないじゃん?」
「……わかってたさ」
巡が一瞬後ろの海奏を見る。それは弟に対する優しさと、それ以上に、寂しさが滲んでいた。
「俺が人間じゃないなんてことは知らなかったけどさ。奏海が自分じゃなくて俺に家を継いでほしい、継いでくれないと困るなんてことくらいはわかってた。俺が病気から治ってから、海奏にはあの曲と同じくらいそのことを言われてたからさ」
「……なーんだ、つまんないの」
「後、俺がお前達に勝てるなんて、思ってないさ……でも、お前は大事なことを忘れてるぜ。俺達の
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