巡狩執行
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だな」
致命傷を受けた当人は驚いていない。むしろ得心がいった、という顔で奏海を見ている。その視線がまるで耐えがたい苦痛のように、海奏は目を逸らした。
「どういう……こと……?」
「まだわからないの? そこにいる巡とかいう生き物はさー、実は人間じゃないんだよ。簡単な話でしょ? 人間があんな風に斬られてすぐ元通りになるわけないんだからさ」
「う、嘘……そんなわけ、ない」
明季葉が自分の頬をつねる代わりのように巡に触れる。戻った巡の身体は、間違いなく人間の感触。でも、人間はあのように斬られて自力で体を修復することなど出来ない。
そんなことが出来るのは──
「どんな生き物にも変身できるメタモン。それに色々工夫して人間の姿にさせて記憶とかを定着させるために決まった音楽を定期的に聞かせて……だったかな?ま、細かいことは忘れたけどそんな感じだよ。そいつはただの人間の模造品なの。わかった?」
「……そういうこと、なんだよな奏海」
フルートから口を離した奏海は深く息を吸い、千屠を一瞥した後巡に向き直った。
「奏海……」
巡を見る奏海の目は、今まで軽い兄を慎重な思考で窘める弟のものではない。作り損ねた粘土細工を見るような、冷たい表情をしていた。
「……ええ、そうですよ!あなたは僕の代わりに家を継ぐために、この旅を無事終わらせるためだけに作られたんです!なのにあなたは事あるごとにポケモンチャンピオンになりたいとか言い出して……危ないことをして……僕がどれだけ苦労したか」
奏海が開き直って巡に、自分の兄でも何でもない模造品に文句を言う。そしてその矛先はすぐに千屠へと向かった。
「許さない……!あなたが!余計なことをしなければ!四葉様のお話しの通り動いてくれれば!彼が僕の兄代わりとして、長男として家を継いでくれたんです!僕の夢は叶ったはずなんです!それを……貴方みたいな薄汚いものが、何のために!!」
「いやー、ごめんごめん。でも予定が変わっちゃったんだよ。それに、元々奏海君のお兄さんの方から突っかかってきたわけだしね?」
まるで罪悪感という感情がないかのように笑う千屠に激昂する奏海が詰め寄ろうとする。怯えよりも怒りが勝った、攻撃的な行動。でもそれを、巡は無理やり腕を掴んで止めた。
「離してください!」
「駄目だ、お前が殺される!」
「うん、今までほんとごめんね。自分がフルート奏者になりたいっていう夢の為には代役のお兄さん、しかもちゃんと家を継いでくれるような人を仕立てなきゃいけないから苦労したよね。でももう、どうだっていいじゃん?」
「良くないッ!!」
「どーでもいいって。巡が人間じゃないって証明してくれた段階でお前の役目は終わってるんだからさ。なあ、ダチー」
「……オオンッ!!
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