開かれるパンドラの心
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「いいのよ。私の目標はもう絶対にかなわない。でも四葉の目標は……この地方を良くしたいっていう思いは、まだまだ叶えられる。そうでしょ?」
「……涼香は、強いね。僕よりも、ずっと」
「一年間も現実に受け入れずに引きこもったのに?」
涼香が笑い、涙を零す四葉もつられるように、ずっと抱え込ませてしまった罪悪感と重荷を下ろすように笑みを漏らそうとした。その時だった。
「なーんか二人して悲劇のヒロイン気取りな会話してるけどさあ……そんな都合のいい選択肢、あるわけないじゃーん?」
ジムの屋根から、レーザーのような鋭利な影がいくつも伸びた。それは正確に、四葉の心臓を狙っていた。四葉のジャローダがとぐろを巻き身を挺してわずかに軌道を反らしたそれは――四葉の腹と足を貫き、四葉に悲鳴を上げさせた。
「四葉ッ!!」
「あははははははっ、さすがチャンピオンのポケモン、ぎりぎりで気づいて即死は免れたみたいだね!」
地面から優に五メートルはある屋根の上から、影が二つ降り立った。一つは二メートル近い大型の肉食獣、オオタチ。そしてもう一つは以前涼香の前に現れた危険なトレーナー、千屠に他ならなかった。オオタチの腕に残る黒いオーラが、『シャドークロー』で四葉の命を狙ったことを物語っている。
「千、屠……何の、つもりかな」
「いやーあんまり二人の茶番がうすら寒いから、せめて将来を誓い合った直後に片方が死ぬっていうわかりやすい展開にしたげようというせめてもの慈悲だよ? なあダチー?」
「オオンッ!」
「ッ、ヘルガー!」
「ガアアアアッ!!」
ヘルガーの火炎放射が千屠のオオタチに放たれ、オオタチが避ける。にらみ合いになったところを、四葉が息も絶え絶えに言う。ジャローダが、オオタチの巨躯させ悠々と丸呑みに出来そうなほどの大きな口を開けた。
「君がそういう子なのはわかってるけど……僕に勝てると、思うかい……?」
「いや全然? だから真っ先に狙ったんだし……ほら、クローバーちゃんもいいの? このままほっとくと大事な主人が死んじゃうよ?」
「……!!」
クローバーが、四葉の体に蔦を巻き付け自身のエネルギーを分け与える。流れる血の分を補いはするが、元々身体が虚弱な四葉にとってダメージは深刻過ぎた。涼香が怒りが燃え上がる。
「……何のつもり」
「うわ怖。でもさー、そっちのお姉ちゃんは自分で弟を殺したことを認めるんでしょ?だったら俺が四葉姉ちゃんを殺すのも認めてよ」
「ふざけないでッ!!ヘルガー、『火炎放射』よ!!」
「っと!!」
千屠自身に放たれた炎を、ポケモンに頼ることもなく側転で避けた。以前会ったときもだったが、尋常ではない身のこなしだ。
「もう一度だけ聞くわ。なんでこんなことをしたの」
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