開かれるパンドラの心
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ピオンになりたかったなんて、私だってよくわかってた。わかってなきゃ、いけなかった」
真実を、たくさんの情報から見つけ出す必要などなかった。四葉が自分を罠にはめた理由なんて、はめなければいけない理由なんて、とっくにわかっていたはずだった。それでも落ち込み誰とも話さず堕落していた自分は、四葉の口車に載せられ煽られるようにありもしない原因を滑稽に探していただけだったのだ。
後悔と罪悪感に震える涼香に反比例するように、四葉の目が細まり、不快感を露にする。
「……で?」
「だから……」
「だからなんだい? ああそうだよ。弟一人なんかの為にチャンピオンの権力を使おうとする涼香よりも僕がチャンピオンになるべきなんだ。君の傲慢で私利私欲に走る姿勢にはうんざりだ。だからただ勝つだけじゃなくて罠にはめたんだよ。わかった?」
「だったらなんで、一年も経ってから私にそのことを知らせたの?」
「そんなことどうだっていいじゃないか。チャンピオンだって何でもかんでも周りに言うことを聞かせられるわけじゃないんだよ。弟のことしか考えてない君とは違って、僕にはこの世界の為にやりたいことがたくさんあるんだから」
「だったら、ずっと放っておけばいいじゃない。本当は……」
その言い分ならば、涼香に自分のせいだと仄めかして旅に出す必要などない。涼香が堕落していくのをずっと放置していればいい話だ。仮に涼香が投げ出したり自分の為に新人トレーナー達を危険な目に合わせたりすればこの旅を計画し、これからのトレーナー達に安全な旅路を歩んでほしいというチャンピオンとしての四葉が困るのだから。
「弟が死んだことは、四葉にだって想定外だった。いくら四葉が賢くても、私が不正をしたから弟が自殺するなんてわかるはずがない」
決勝戦の前弟の名前を出したのは涼香の負けられない気持ちを煽りに不正をさせるための誘導。そこに計算があるとしても、その後涼香やその弟がどうするかなど誰にも操りようがない。四葉はあれから一年経つまで自分たちに関わっていないのだから。
「全部、私のせいなんでしょ?私があんたの気持ちも知らずに勝とうとして、弟の死を受け入れられず自堕落になって、そんな状態が一年も続いて……それが嫌だったからあんたは自分を悪者にした。自分のせいで私の弟が死んだかのように論点をすり替えて!無理やり私を外の世界に出して立ち直らせようとした。そうでしょ?」
「……!!」
四葉の侮蔑の表情が、一転真剣なものになる。
「それは違うね。涼香の思い込み、ただの現実逃避さ。今言ったことが真実だとしたら、弟の死の責任は君が負うことになる。君の努力を応援してた人達への裏切ったこともだね。それを君自身が背負うんだよ?それが耐えられなかったから君は、あそこに閉じこもっていたんじゃないか
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