屠殺人は孤独という名の自由に踏み出す
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。簡素だが、意志の籠った文面に、それぞれ感じるところがあるのか。四葉も千屠も真面目な表情になった。
「……どうするの?」
「行くよ。君が今教えてくれたことを確認したいし……涼香の頼みだからね」
そこで四葉は、千屠の頭を細く冷たい手で撫でる。
「ありがとう、君が涼香達の状況を教えてくれたし、コンタクトを取ってくれる役目を引き受けてくれたおかげで僕の計画は実行できた……これからもよろしく頼むよ」
「まあ、そうしないと俺は罪人としてギロチンだったからってのもあるけどさ……うん、俺が平気で人を殺すヤバい奴って知っててこうしてくれる四葉姉ちゃんのことは、嫌いじゃないよ」
千屠は人殺しだ。捕まり、然るべき罰が与えられるべきところへ四葉が目をかけた。頭を撫でられることは少し恥ずかしそうにするものの、千屠は四葉の想いに悪い気はしないのかしばらくそのままにしていた。
「確かに君は、人殺しさ。だからこそそれを自覚出来ているなら救いがあって然るべきなんだ。悪人だからどんな最期を遂げても自業自得だとは、僕は思わない」
「……最初からそう言えばいいのに、四葉姉ちゃんは回りくどいなー」
微妙に噛み合わないやり取りの後、千屠は四葉から離れ、オオタチと一緒に出ていく。
「四葉姉ちゃんはこれからもよろしくっていうけどさあ……それは無理だと思うんだよね」
一人になった千屠は、歩きながら呟く。その目は四葉と語らっていた時の姉を慕う弟のようなそれとは全く違う、養豚場の家畜を品定めするような、命に対する冷酷な目。
「うん……多分、こうなるかな。その時は……苦しまないように終わらせちゃおうか、ダチー」
「オオンッ」
千屠の想像する未来には、血まみれで倒れる四葉の姿が映っていた。自らが何より信じるダチに気さくに問いかける。気負う必要や罪悪感を感じる必要などない。今まで自分が千ほど繰り返してきた、いつものことだ。
「引率者さんの苦しみも、四葉姉ちゃんの計画も、俺が屠殺してあげるよ……この名前に懸けてね」
彼の動く理由は、自らの名前。それを刻みながら、少年は歩み続けた。
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