葉のない所に火は立たぬ
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らない。ありがとう、と頷いてから本題に入る。
「うん。そのはずだったけど……さっきの涼香の話で確信した。この旅は、何かおかしい」
「四葉が……チャンピオンが旅は危ないからルールを整備したんじゃないの?」
今回からポケモントレーナーが旅をするルールに大幅な変更が加わったのは涼香も知っている通り。ポケモンが渡されるのは旅に出る半年前から。引率トレーナーの存在、ジムの簡略化、上げればきりがないほどだ。明季葉は首を振る。
「そもそも、この旅に奏海は来ないはずだった。目的は、明季葉と巡の親睦だから。奏海自身、旅を楽しんでいるようには見えない」
許嫁で云々と言うことなら確かに奏海は必要ないのだろう。涼香の見た限り奏海は臆病というか神経質と言うか、自分や巡が危険にさらされることをよく思っていないようだった。
「それは、単に奏海や家族が巡を心配してるからじゃないの?あの性格で記憶喪失じゃ不安にもなるだろうし」
「巡達に会うのはこの旅で初めてだったけど……でも、明季葉は巡と奏海はすごく仲が悪い兄弟だって聞いてた」
「え? どういうことよ、それ」
元気よく積極的な巡と大人しいが知識が豊富な奏海。奏海が兄の軽率な行動をたしなめたり、巡が弱音を吐く弟を叱咤することはあっても険悪になったときのことなどまだ見たことがない。
「そもそも巡が明季葉の聞いてた人物像と大分違う……巡はもっと気が短くて喧嘩っ早くて、家業なんか継がずにプロのトレーナーになりたいからこそ今回の旅に出ることになったって聞いてた……家業を継ぐのは長男って決まってるから本当は巡が継ぐべきなんだけど、奏海に押し付けようとしてて……でも奏海もフルート奏者になりたい夢があるからお互いに反発してたはず」
「ちょっと待って。理解が追い付かないわ」
涼香の知る巡はポケモントレーナーへの憧れこそあれ出会った時の自分の忠告を素直に受け止めていた。明季葉の話は、まるで涼香の知る二人とかみ合っていない。
「それだと、明季葉の許嫁の巡と今旅してる巡が別人に聞こえるんだけど」
「……わからない。直接会うまで、顔も知らなかったから」
えらくきな臭い話になってきた。と涼香は思う。
「明季葉がおかしいと思ったのは、さっき巡が言ってた。目が覚めて記憶の分からない、でも周りに怖がられる自分を奏海が真っ先に助けてくれたって。それと……危ないことが嫌いな奏海が、真っ先に涼香について来てほしいって言ったこと。まるで、明季葉たちに否定させたくなかったみたいだった」
「……確かに、さっきの奏海はなんかおかしかったわね」
全ての人間がポケモントレーナーやバトルに対して関心があるわけではないのだから、明季葉同様ピンとこないのもわからないではない。しかし奏海はそもそも話を聞い
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