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問題児たちが異世界から来るそうですよ?  〜無形物を統べるもの〜
一族の物語 ―交わした約束― A
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「さてさて。自我は封じてるとはいえ、コイツは本物の神霊……それも、本来箱庭ではありえない制限なしの神霊だ。そっちの戦力には、釣り合うんじゃないか?」

指から伸びる呪力の糸を繋ぎ、うっすらと笑みを浮かべながらそう告げる。その様を見て、なるほど確かに今の彼は神霊なのだと飛鳥は理解した。

《彼やその先祖たちが殺めてきた異形。その魂を捕え、永遠に使役する術……となれば当然、こうもなるわよね》

アルマの背後に隠れ、樹々や式神を並べつつ、心の中でこぼす悔しさ。いつから自分はこうなったのだろうという、負の感情。否、その矛先は自分だけに向いたものではなく、コミュニティ全体へ向いたものだ。

もしかすると。長く彼といて、そのギフトの使用を見ていく内に誤解していたのかもしれない。

妖怪たちは皆、その指示の下戦っていた。そこに不満は、感じられなかった。
霊獣たちは中にはぶつくさと文句を言うものも、気だるげにする者もいたが。それでも、自ら彼に従っていた。
神霊たる蚩尤も、彼を従うに足る存在であると認め、その力を貸し与えた。

封印の結果を見ていく内に、誤解していたのかもしれない。

アジ=ダカーハ。最悪の魔王もまた、彼と殺し合い、その果てに互いを認め、討ち取られた。第二の生だとばかりに本拠で仕事を楽しんでいる様には、心の中でどこか喜びを感じていた。
そして何より、ジャック。南瓜頭の道化師(ジャック・オー・ランタン)であり、正体不明の殺人鬼(ジャック・ザ・リッパー)でもある、彼。自らの霊格を、功績を、贖罪を。その全てを捨て去って戦った彼は、一輝の檻へ自ら封じられた。本来失われるはずだった存在は……しかし、魂のみの存在となって、同士たちと再会した。永遠の再会とはいかなかったが……それでも、救いをもたらしてくれた。

そんな術ばかり見ていたから。どこか正しいギフトなのだと、誤解してしまったのではないか。

《だって、これは……》

眼前の女神、その表情を見る。苦しそうに、悔しそうに、辛そうに歪められ、同時に恐怖を抱く、そんな顔。
耀から、話は聞いていた。主催者権限を封じ、地へ縫い付け、手足を奪う。そうして一切の抵抗をできなくされた彼女を、鬼たちに喰わせた。

生きたまま、無限に喰われ続ける。あの感情なんてないように思えた彼女が、悲鳴を上げ、身をよじり、どうかと懇願した。それだけの行いをしつつ、さらには死を選んだ彼女の魂を捕え、人形として使役する。確かに意識は残っているのに、自由を奪われ、望まぬ行いを強制される人形として。
死者への冒涜。それも、この上なく、終わりないモノ。それを平然と行う、眼前の存在は……

《はぁ……今すぐにでも、飛びだしていきそうなものだけど》

心の中で、ため息を一つ。久遠飛鳥として『
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