三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第32話 人型モンスター(1)
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耳が、やや尖っていたのだ。
ティアもそれを確認すると警戒態勢をとる。
男は、端正な顔を構成している口を少しだけ緩めると、長い銀髪を大きくなびかせながら、シドウたちに近づいてきた。
「たしかに俺は人間ではない。アルテアの民だ。人間たちが言うところの『人型モンスター』だな」
二人のやりとりが聞こえたのだろう。程よい距離で立ち止まり、男はそう言った。
発せられた言葉は旧魔王軍の公用語ではなく、人間のものだ。発声に訛りもなく、流暢だった。
男が背中に背負っているのは、通常では考えられないほどの大剣。
だが、それを抜く気配は今のところない。
「人型、モンスター……」
ティアはもちろん、シドウも、人型モンスターを名乗る者は初めて見ることになる。
大魔王亡き今、はっきり人間と敵対関係にある種族ではない。
しかし現在、その残党はグレブド・ヘルと呼ばれる高地に居住していることになっていたはず。
二人はいっそう警戒を強めた。
「シドウという名だったな。風貌が独特と聞いていたが、なるほどこれはわかりやすい」
シドウの服装のみすぼらしさを言っていると思われるのだが、もちろんシドウもティアも笑わない。
逆に銀髪の男は、余裕の笑みを浮かべている。
「俺の名はエリファス。ドラゴンと人間のハーフであるお前を『新魔王軍』に勧誘しにきた」
放たれたその言葉は、シドウに衝撃を与えた。
「新魔王軍……? 勧誘……?」
ティアも驚いたのか、シドウと男を交互に何度も見ている。
「わけがわかりません。どういう……ことですか」
シドウは説明を促した。
男は一つうなずく。
「約二十年前。大魔王様は、勇者を名乗る人間とその仲間たちによって討たれてしまった。アルテアの民……お前たちの言う人型モンスターの幹部はだいたいがその過程で殉職し、協力関係にあった有力な動物も殺し尽くされ、魔王軍は瓦解した。ここまではいいか?」
シドウもそれを受け、小さくうなずいた。
「はい。それは俺も聞いています。その後人型モンスターは、特に野望を持つ者が現れることもなく、ひっそりとグレブド・ヘルで暮らしているとも」
「それはあまり正しくない。旧魔王軍で研究職のトップであったダヴィドレイという男は生き残っている。今も元気に魔王軍復活を画策中だ」
「ダヴィドレイ……魔王軍復活……? でも大魔王が死んでいるのに」
「ああ。たしかに亡くなられている。だが、白骨となったご遺体は魔王城に残ったままでな。アンデッドとして生き返らせるつもりらしい」
「は? でもアンデッドにしたところで意味が――」
「当然そこは意味があるようにするということだ。新しいアンデッド化の技術を開発中でな。その
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