467部分:夕星の歌その七
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夕星の歌その七
「いいな。何があっても潰れるな」
「俺は別に潰れても構わないんだがな」
言いながらもう三本目を開けているのだった。今度は自分で瓶の栓を開けていた。
「それならそれでな」
「馬鹿野郎だな、御前は」
呆れた言葉も何度も出す。しかしそれでもどうしても正道に対して言ってしまうのであった。それが今の佐々でありそして皆だった。
「潰れてそれで何になるんだ」
「余計なことを忘れてしまえる」
だからだという正道だった。
「だから飲む。潰れてもいい位にな」
「そこまでヤケになれる理由がわからねえよ」
「酒を飲む店にいてもか」
「確かにそうした客は今まで何人もいたさ」
それは否定しない佐々だった。やはりこの商売の家にいてはそうした人間はどうしても見てしまうのである。避けられないことであった。
「それでもな。いいものじゃないぜ」
「終わりはか」
「途中で気付いて止めた奴はいいさ」
「止めなかった場合はか」
「身体潰すか心潰して終わりさ」
どちらにしろ潰れてしまうということであった。
「どっちかだよ。それで終わりなんだよ」
「潰れるならどちらでもいい」
ここでも自棄になった言葉を口に出してしまうのだった。
「忘れられるのならな。あいつ・・・・・・」
「あいつ!?」
「いや」
また言葉に出しそうになったので急いで止めた。危ういところだったと急激に酔いに支配されていく頭の中で思うのであった。70
「何でもない」
「本当か?」
「そうだ」
いぶかしんで聞き出そうとするそれはかわしてみせた。
「本当だ。何でもない」
「だったらいいけれどな。それじゃあな」
「ああ。何だ」
「明日も来るんだな」
これまた真剣な目であった。その目で正道に問うてきたのである。
「明日も。うちに来るんだな」
「多分な」
三本目を次々に飲みながら答える正道だった。その飲む速さもかなりのものだ。やはり何か自棄になっているものがそこには見えていたが佐々はもう今は言わなかった。
「そうなる」
「じゃあ来い。酒をたっぷり用意しておくからな」
「明日は何だ。老酒かバーボンか」
「多分ウイスキーだな」
それだというのである。
「安く出せるのはな。だからそれ飲め」
「わかった。じゃあそれでいい」
「そのかわりだ。飲む前にだ」
「牛乳か」
「それは飲め」
このことは強く言うのであった。
「悪酔い、いや潰れない為にな」
「遅かれ早かれ潰れると思うがな」
「それでも飲まないよりましだ」
佐々はそれでも彼に少しでも酔い方が少しましになって欲しかったのである。他ならぬ彼のその身体と心の為であるのは言うまでもない。
「わかったらいいな」
「わかった、御前の心だな」
「そうだ、俺の心
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