怨嗟に燃える怪物
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ンの拳が真っ赤に燃えて、顎を思い切り捕らえた渾身のアッパーを放つ。ヘルガーの体が宙を舞い、受け身も取れず地面に倒れた。それを見て、玄輝はルガルガンに回復の薬を容器の口を開けて渡す。ラッパ飲みをしたルガルガンの体力が完全回復した。
「相手の攻撃をギリギリまで受けきり放つ起死回生の一手はまさに守りに優れたルガルガンだからこそ会得できる最強の技。敢えて一旦毒受けてやったのも計算通りなんだよ。まさにお前は『まな板の上のコイキング』というわけだ」
「ッ……」
「ヘルガー自体はなかなか鍛えられているが、あんな単調な命令しか出さんということはすなわちお前とヘルガーの間に絆がない証拠。故にそのヘルガーにお前のために立ち上がる力はない……今のお前は正に『風前のヒトモシ』。引率など任せるわけにはいかないし旅など認められないな。神妙にお縄につくがいい」
図星だった。ポケモントレーナーが手持ちに高度な戦略を覚えさせるためには相応の信頼が必要だ。ボールに入れられているポケモンでさえ、信頼できない相手から複雑な命令をされて聞きたがりはしない。真実を知る旅に出たものの、どこか煮え切らない涼香の心の迷いをヘルガーは見抜いており、苛立っていたのは間違いない。
「……まだよ」
「『ねごとはねむるを使ってから言え』。もしかして胸に抱えたヒトモシで俺のルガルガンに勝てる気ではないだろうな? そんな未進化ポケモンを大事そうに抱えて何のつもりか知らんがな」
ヒトモシの直接的な戦闘力は低い。その辺の野生相手ならともかく実力のあるトレーナー相手では勝負にならない。だが。
「……ヒトモシ。喰らいなさい」
「もしぃ……」
「一緒にいるって約束したでしょう。あなたが裏切った相手を探すためにも」
「……もし」
ヒトモシの胡乱げな瞳が見開かれ、頭の炎が激しく燃える。それを抱きかかえる涼香の体そのものに燃え移り、体を燃やした。紫色の炎に包まれる涼香に、暴走族が驚くが玄輝だけは憮然としている。
「……何の真似だ、そりゃ」
「……受け取りなさいヘルガー!私の苦しみを、ヒトモシの嘆きを!あなたの怒りに変えて!!」
「もしぃ!!」
ヒトモシが涼香の心を燃やし、それによって発生した炎がヒトモシの力でヘルガーの体を包み込む。涼香の魂を燃料にしたヒトモシの紫の炎がヘルガーの体に纏われ。活力を与えたというには昏すぎる炎だがそれでもヘルガーは立ち上がる。纏った炎が体を一回りも二回りも大きく見せ、地獄の番犬のように立ちふさがる。
「グルルルルルルゥ……」
怨みの紫焔がヘルガーの輪郭を揺らめかせ、ゆっくりと持ち上げた頭がまるで三つに増えたように炎が膨れ上がる。体内から作り出す毒素が焼け、刺激性の悪臭が周囲の鼻をついた。三つの口に溜められるのは、毒と怨念の
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