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ある晴れた日に
46部分:妙なる調和その七
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妙なる調和その七

「私の身体には阪神液が流れているからね」
「何だよ、それ」
「黄色と黒の液体よ。血液と一緒に流れてるのよ」
「そりゃ人間じゃねえだろ」
「それでもよ。流れてるからなのよ」
「よく見たらシャツに番号書いてるじゃねえかよ」
 見れば静華のその黒と黄色の縦縞のシャツの胸には番号が書かれている。その番号は十一番であった。野本はその背番号をよく知っていた。
「いい番号だけれどな」
「流石にわかるみたいね」
「村山実さんか」
 野本もさりげなくさん付けであった。
「あの人はな。神様だからな」
「わかってるのならいいわね」
「けれどこれでコンテスト優勝できるのか?」
「大丈夫よ」
「ねえ」
 また凛と顔を見合わせて言い合う。
「黒と黄色だったらね」
「最高よね」
「中森もなあ」
 彼女は彼女で原色だった。青と緑のやたらと目立つタイツとミニスカートだ。
「他の奴等も何か。北乃はやっぱりそれかよ」
「何か悪い?」
「帽子がな」
 上のシャツは白で下の膝までのズボンは黒だ。ただし帽子とその手に持っているメガホンが問題であった。見れば見事な水色である。
「ベイスターズから離れろよ、本当に」
「じゃあ他にどの帽子があるのよ。帽子っていったらやっぱりこれでしょ」
「駄目だろ、そりゃ」
 しかし野本はまだ言うのだった。
「ファッションセンスねえだろ、御前も」
「ベイスターズのユニフォームは一番いいじゃない」
「いいのは何時でも阪神だ」
 野本もこれは譲らない。
「昔の近鉄の三色帽もよかったがな」
「いつも思うけれどあんた意外としぶい趣味してるわよね」
「まあな。最悪は巨人だがな」
「それは同意ね」
「とにかくだ。御前は特にひでえな」
 彼が一番呆れていたのは親戚の竹山だった。
「黒のジャージだけかよ」
「学校から帰ったら何時でもこれじゃない」
「だからつってコンテストにそれはねえだろうが」
 完全に呆れ返った声であった。
「ったくよお、御前が最悪だよ」
「そうなんだ」
「そうなんだじゃなくてな。まあとにかくはじまるぜ」
「そうだな」
 正道が彼に応える。彼はドレッサーだのどうのこうのは全く意識していない様子だった。
「とりあえず全員参加だな」
「そういうことさ。で、これが終わったらな」
「カレー作るんだね」 
 恵美がクールに応えた。
「カレーなら任せておいて」
「ああ、御前の家喫茶店だからな」
 何故彼女が任せろとまで言ったのかわかった。
「カレーもよく作るんだな」
「軽食だからね」
 作るというのだ。だから自信を見せていた。
「うちの店の自慢よ」
「だったら期待してるぜ」
「変わったカレーがいいな」
 佐々の興味は服よりカレーだった。
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