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ある晴れた日に
458部分:これが無の世界その七
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これが無の世界その七

「わかってます」
 そのことを頭の中で把握し己の心に刻みながら答えた正道だった。
「それも」
「私達も。誰にも言えなくて」
「じゃあ柳本達も」
「咲ちゃん達にも言える筈がないわ」
 顔を小さく横に振ってまた言ったのであった。
「知ってるわよね。あの娘達と未晴のこと」
「ええ、よく」
 このことは知らない筈がなかった。嫌でも入学の時から目に入ることだったからだ。六人の絆の深さのことはクラスの誰もが知っていることだった。
「未晴がいじめられそうになったら絶対に助けてくれたし」
「らしいですね」
「困っていたら助けてくれて落ち込んでいたら慰めてくれて。本当に幼稚園の頃からずっと仲良くやってきている娘達なのよ」
 このことを今話すのだった。正道も知っているということをわかったうえでそのうえで彼の心にこのことを印象付けるようにして話すのだった。
「だから。余計に」
「あいつ等が知ったら普通じゃいられないですね」
「だから。絶対に言えないわ」
 姉妹同然の彼女達に対してすらなのだった。それだけ深いものがあることなのだった。
「何があっても」
「そうですね、やっぱり」
「だから。よく考えて」
 またこのことを正道に言ってきた。
「よくね。本当に」
「わかりました」
 彼女の言葉にここでまたこくり、と頷いたのだった。
「じゃあ」
「それで。音橋君だったわよね」
「はい」
「未晴、どうなるかわからないけれど」
 強張った顔での言葉だった。その強張りから今の未晴がどういった状況にあるのかがよくわかる。それは何よりも雄弁に物語るものであった。
「私達がずっと支えていくから」
「ずっとですか」
「娘なのよ」
 そしてこう言うのである。
「親が。家族が娘を支えないでどうするのよ」
「そうですね。それは」
「だから。何があってもきっとまた立てるようになるから」
 こう言うのであった。だがそれは口から、そして心から何とか言葉を出しているといった感じであった。その言葉を今出しているのであった。
「待っていて。未晴のその時を」
「待って、ですか」
「外にはまた病気だって言うけれど」
 隠さなくてはいけない、隠し続けていなくてはならない、このこともよくわかっているのだった。わかっていない筈もないことだった。
「それもわかってね」
「わかってます。じゃあ」
「何もできないけれど。御願いね」
 帰ろうとする正道に告げた。気付けば二人はコーラーのコップをそのままずっと持ったままであった。二人共一口も口をつけてはいなかった。
「それで」
「わかってます。それじゃあ」
「何時来てもいいから」
 立ち上がり場から去ろうとする彼にかけてきた言葉であった。
「未晴のところにね」

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