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ある晴れた日に
458部分:これが無の世界その七
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「考えさせて下さい」
 今の言葉にもこう返すしかできなかった。
「それは」
「そう。けれど考えてね」
 このことを彼に念押しするのであった。
「よくね」
「ええ」
 彼はそのままその場を離れた。振り向こうとしても振り向くことはできなかった。廊下の途中でまだコーヒーの入った紙コップを持っているのに気付いた程だった。
「くそっ」
 そのコーヒーを一気に飲んだ。完全に冷めてしまっておりそれはもうホットコーヒーではなくなってしまっていた。かといってもアイスコーヒーでもない。ぬるいどころか普通の水の温かさになっており弱い苦さと甘さしか感じさせなくなったそのコーヒーを一気に口の中に流し込んだ。そのすぐ後で紙コップを忌々しげに握り潰して傍にあったゴミ箱の中に放り込んだのだった。
 そのうえで病院を去る。だが気分が晴れずその足で猛虎堂に向かった。店に入った時は丁度六時だった。店にいるのは厨房の中の佐々だけだった。
「おい、今日は随分早いな」
「そうか」
「何か嫌なことでもあったのかよ」
 彼はカウンターの席の方に向かう正道に声をかけてきた。

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