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ある晴れた日に
451部分:辺りは沈黙に閉ざされその十八
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させるのだった。
「あの娘だってわかっていているわよ」
「そうだったらいいけれど」
「確かにね、反応はしないわよ」
 今の言葉にも眉を動かした正道だった。
「反応はない」
「それでもよ」
 彼女達は正道が密かに見ていることに気付かず玄関を出ながら話をしていた。
「それでも未晴はわかってくれているわ」
「本当に!?」
 老婆は彼女に顔を向けて真顔で問うていた。
「私達のことがわかっているのかい?本当に」
「ええ」  
 しかしであった。ここで彼女は俯いてしまった。
「きっとね。だから今日も」
「行くんだね」
「病院はわかっているわね」
 ここで彼女は言ってしまった。全てを変えてしまう言葉を。
「今から行く病院は」
「ずっとお世話になっている病院だからね」
 老婆は言うのだった。
「あそこはね」
「じゃあ行きましょう。タクシーは呼んだから」 
 また言う母親だった。
「あそこにね」
「タクシーで行ける場所か」
 正道はまずそれを察したのだった。
「そしてだ」 
 そのうえだった。ここでさらに推理を働かせるのだった。その脳裏で。
「ずっとお世話になっているか」
 物陰からとりわけ老婆を見て考えた。
 見れば歳は七十近い。そうした年齢でずっと世話になっている病院とすればだ。
「それで人が入院できる」
 このことも考えに入れた。
「となると」
 答えが出た。あくまで憶測だが。その病院は。
「そうか。あそこか」
 そこに向かうことにしたのだった。タクシーは既に二人の前にやって来て彼女達はもう中に入っている。そうしてそのタクシーが出発するのを見ながら。彼もまた進むのだった。


辺りは沈黙に閉ざされ   完


                2009・9・5

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