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逆さの砂時計
純粋なお遊び
合縁奇縁のコンサート 22
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て被害届を出すなど、厚かましいにもほどがありますわ」
 「最近の若い子は簡単に傷付いちゃうから、加減が難しくて困るよ。アーレストや君みたいに、金棒で殴打してもちょっと腫れる程度で済むくらいになってくれれば、私としても安心して向き合えるんだけど」
 「え。いえ、さすがにそれは……」
 女神(わたし)でも傷付きますよ、とは、なんとなく言い難い。

 マリアは知らなかった。
 今は穏やかでのんびりした口調のコルダ大司教に、壮絶な傭兵時代(かこ)があった事も。
 此処に居るプリシラ次期大司教が、その彼から薬草に関する知識の一端と戦闘技術の一部を学んでいた事も。
 それ故にこの二人……いや、かつて世界中のあらゆる戦地で『鋼の双璧』と謳われた無敵の傭兵王コルダとタグラハンの両名に弟子と認められ育てられた戦士・アーレストを含めた三人が、絶対の信頼で結ばれている事も。
 その影響で、三人の「負傷具合に対する認識の深度」が一般民とは大きくかけ離れている事も。

 「第一……」
 プリシラが両肩を持ち上げ、ふるふると緩く首を振り
 「「聖職者たる者、骨折の一つや二つ、笑って遣り過ごさなくては」」
 コルダと声を揃えて、やれやれと深く長い溜め息を吐き出した。

 アリア信徒、ガチ勢は結構本気で恐い。

 二人との間に、目には映らないが確かに存在する極太の境界線を感じ取ったマリアは、冷や汗が流れる背筋をピンと伸ばして居住まいを正し、この線だけは絶対踏み越えないようにしよう……! と、心の内で密かに固く誓った。

 「そ、その辺りはひとまず置いておくとして! あの光る雪への対処についても、教皇様と話し合っていたのではありませんか?」
 「ん? んー……、それなりに、ね。けど、大半の大司教達は大急ぎで帰っちゃった後だから、それも一応『様子見』って形になったよ。各国への通達も飛ばしたし、殆どの信徒は大人しく上の指示に従ってくれると思う。問題は」
 「盲目的なアリア信徒達と、アリア信仰を邪教とする勢力の暴走……でしょうね」
 「女神アリアの顕現騒動に、各宗教の主要人物の改宗。布教には絶好の機会なのに、何故か主張を控えろと抑圧する上層部。言い掛かりに暴力を付けてくる異教徒達。若いアリア信徒を中心に溜まる疑問と不満。トドメに女神(アリア)色の光る雪だ。大量の火薬の近くで火花が散っているようなものだよ。何もかも時機が悪過ぎた……と言っても、総ての事柄に本物が関わっていたのでは、仕方がないのだけど」
 「一連の流れに関しては、返す言葉もありません」
 「いや、言い方が悪かったかな? マリアさん達を責めているつもりは無いよ」
 「そうですわ。切っ掛けが神代(かみよ)の争いであっても、現代のこれは私達人間の在り様の問題。延いては、他者に依存する事を良
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