第一部
第二章 〜幽州戦記〜
十三 〜并州〜
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でなく、皆が私を見ていた。
「そうだな。進軍を再開する、高順と臧覇は、案内を頼む」
「ははっ!」
進軍の最中。
「こ、これを御大将に!」
「オラが獲った猪。皆で食べてけれ!」
住民から、差し入れが頻繁に来ていた。
「高順。どういう事なのだ?」
「はっ。晋陽に着けば、おわかりかと存じます」
「だが、ここは丁原殿が治めていた期間はほんの僅かと聞いておる。……ふむ、月の威光がまだ生きている、という事か?」
「それもございます。董卓様が刺史としておられた間、この并州はよくまとまっていた、と聞き及んでいます」
それならば、わからぬでもない。
……が。
「月」
「はい、お父様?」
「お前が治めていた時分だが、その間の、具体的な成果を教えて貰いたい」
「具体的、ですか」
月は、少し考えてから、
「まず、飢饉が続きましたので、可能な限り税の減免と、食糧の配布を。ただ、それもあまり効果はありませんでしたが……」
「餓死者を防ぐ事はかなわなかった、そうだな?」
「はい」
辛そうに、月は俯く。
だが、こればかりは為政者の責任とばかりは言えぬのだ。
自然の恵みがなければ、人は生きていけない……それは、太古から不変の事実。
だが、自然は恵みばかりを与える訳ではない。
干魃や洪水、嵐、地震……。
そうした自然の脅威は、時として人々に牙を剥く。
もっとも、そうした事態を如何に乗り切るかが、為政者として問われる事でもあるのだが。
……幕府には、そうした民の期待に応えるだけの者が欠けていた、と言わざるを得ない。
そうでなければ、あのように一度に民の支持を失う事への、説明がつかないのだ。
その事に対して、何も出来なかった私に、偉そうな事は言えぬが、な。
「その他は、治安の回復ですね。匈奴と接するせいか、人の出入りが多い土地なので。その分、盗賊の方も多かったんです」
「なるほど。こちらは、成果を上げたのだろう?」
「……そう、思います。霞さんや華雄さんが、頑張って下さいましたから」
遠慮がちに言うが、恐らくは上々の成果を上げた、と見ていいだろう。
「聞く限り、月の治政には何の問題もなかった、そう思えるな」
「……いえ。刺史の権限では及ばない事もありましたし……」
「そうだな。税の減免、と言えども、刺史で全てが出来る訳ではないだろう。中央から命ぜられた分はそのまま送らねば、今度は刺史が罰せられるだろうからな」
「ええ。私はどうなっても構わないのですが、そうなれば困るのは民の皆さんですから」
心優しき月のような為政者ばかりであれば良いが、今の漢王朝の腐敗ぶりを見る限り、むしろ稀な存在、と考える方が自然だろう。
むしろ、己の
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