暁 〜小説投稿サイト〜
『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
力脈
[5/6]
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
にも様々なことか学べる立場にいながら日々を無為に過ごすZクラスの仲間達が、そしてSクラスを羨望するだけでなにもしない学院中の生徒達が」
「学院中の生徒達はともかく、おなじZクラスの連中ならおまえの考えを伝え、啓蒙することができるのでは?」
「とっくに伝えましたよ、俺の考えを。でも、彼らには伝わらない、彼らの心に俺の声は響かない」
「う〜む……。ときにカートよ、おまえは立禅馬歩の鍛練をよくやっている。充分に練れた」
「
師匠
(
マスター
)
に比べたら俺などまだまだです」
「魔力制御の訓練も申し分ない。こんな真似もできるだろう」
言うと法眼は池に浮かぶ蓮の葉の上にふわりと飛び乗った。
「……天の
腕
(
かいな
)
よ、天秤を傾けよ、律の皿は我が意のままに傾け」
カートが呪文を唱えると重力制御の魔法が発動し、法眼の後に続いて蓮の上に飛び乗る。
「
垂氷
(
たるひ
)
よ、銀竹よ、凍てつく空に咲き乱れよ」
法眼の魔法によって水面が凍りつき、長短幾重もの氷柱が突き出ると法眼はその上に飛び乗り、ひょいひょいと歩を進める。
「俺の後に続けるか?」
「そんなこと簡単……ッ!?」
下を見たカートは高低差に
慄然
(
ギョッ
)
とした。わずか数メートルの差にこれほど高いと感じるものか、これほど怖いのか。
高所作業者などと違い、普段から高い場所に慣れていない者にとって自分の身の丈以上の高み程度でも身がすくむものだ。
高所恐怖症というわけでもないのに高さに身体を固くしたカートはその事実に驚く。
「高所への恐怖は殺気を放つ敵への恐怖とおなじ。立禅馬歩の鍛練に耐えたおまえの足腰ならこの上に立ち、移動するのは造作もないこと。だが、それがままならないのは恐怖のせいだ」
「恐怖……」
「立禅馬歩の練功は筋力と腱を鍛えるためだが、もうひとつ重要な極意がある。それは力脈。力脈とは力の流れ、流れの方向を意味する。地に立てば自重が地面に伝わり、空を跳べば大気が体に当たり抵抗を生む。いかなるものにも力の流があり、それゆえ形をなす。立禅馬歩の鍛練のひとつは自らの体重がどのように地に伝わるかを感じるためのもの。筋力を鍛えるのはその力の流を淀みなく伝得るため。そうすれば技の精度も増す」
「…………」
「力脈はすべての技、すべての術の源流と呼んでいい。源流を悟れば心が恐怖によって支配されることはない。これは個人の技術のみならず大衆の心理もおなじこと」
「流れを制することが、恐怖を制する、克服すること……」
「そうだ、カート。さて、そこで話は戻るが、一人の英雄の生み出す『流れ』にみんなが翻弄されているようだな」
「はい」
「どうもよくない流れのようだ。だが流れというものは容易く制することができるものではない。激流に対していかに堅固な土塁や壁を造ろうが
[8]
前話
[1]
次
[9]
前
最後
最初
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ