三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第31話 天への挑戦
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趣旨らしい。
先ほど農業ギルドの前でその話を聞いたとき、シドウは集会が終わるのを待ち、それから責任者に「危険すぎる」と直接警告をした……のだが、聞き入れてもらえなかったのである。
「この実験は大臣からのご指示で、女王様のご承認もある。反対している者などいない」
担当者は、さらにダメ押しをしてきた。
「魔法使いには食うに困っている者も多くいる。兵士になろうにも、大魔王もいなくなって久しく平和であるため募集はない。冒険者になろうにも安定して稼げるとは限らない。今回の計画は、主催こそ農業ギルドではあるが、魔法使いへの救済という国策の一環でもある」
先ほど農業ギルドに集まっていた魔法使いたちは、中年の男が多かった。
大魔王存命中、国は防衛上の観点から『王立魔法学校』を新設し、魔法使いの育成に力を入れていた。だがその国策によって魔法使いとなった当時の若者たちが、今になっては雑用くらいしか仕事がなく、「こんなはずではなかった」という状況に置かれているらしい。
こういう細かいところにも、大魔王討伐の影響が出ているのだ。
シドウは一冒険者で外野ということもあり、そのような事情があるのであれば……ということで、あまりあの場では粘らずに引き下がってしまった。
その判断はよかったのだろうか?
そこまで考えたところで、シドウはなんとなく顔を上げた。
「うわっ」
すぐ目の前にティアの顔があり、驚く。シドウの上半身はそのまま後ろ――ベッドの上に倒れた。
どうやらいつのまにかティアが移動してきており、俯いて考えていたところを覗き込んでいたようである。
「もー。一人で悩まれたら私が暇じゃないの」
ティアがシドウの隣にボンと座った。
「私は大人じゃないし、頼りにならないかもしれないけど。パーティメンバーなんだから、いちおう相談してよ」
足をブラブラさせながら、そんなことを言う。ベッドの揺れが、仰向けで寝たままのシドウの体に伝わってきた。
「ねえ。さっき実験を止めようとしていたってことは、シドウ的には実験は成功しないと思ってるわけだよね?」
「そうだね。絶対に失敗する」
シドウは仰向けのまま、腕で目を隠してそう答えた。
「断言きたー。百人以上は魔法使いが揃ってたと思うけど?」
「それでも駄目だよ」
「そうなの?」
「うん。たぶんこの世界にいる魔法使いを全員呼んでも無理」
「ええ? そんなに? 本当?」
「本当。熱帯低気圧の力というのはそれくらい大きんだ」
シドウの母親が住んでいる山――かつてはドラゴンの一族が住んでいた山――にも、ごく稀にではあるが、熱帯低気圧がやってくることがある。
そのときは決して外に出てはならず、じっと巣で嵐が過
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