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ある晴れた日に
444部分:辺りは沈黙に閉ざされその十一

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辺りは沈黙に閉ざされその十一

「もうね。未晴が入院したその時でね」
「その時って」
「教えられるのなら」
「その時に教えなかったのなら絶対に教えないわ」
 恵美はまた言った。
「お母さんはね」
「そんな」
「そんなことは」
 五人はそれを聞いて反論しようとした。しかしそれはとてもできなかった。
「けれど確かに」
「教えてくれるのなら最初からよね」
「そうよね」
 ここで五人は頷くしかなかった。恵美のその言葉に。
「あのお母さん教えてくれることは最初から全部教えてくれる人だし」
「だったら」
「もう最初から」
「そんな、私達に教えられない程酷い風邪なの?」
「本当に風邪かしら」
 明日夢も来た。そのうえでこんなことを言うのだった。
「未晴って本当に」
「だから風邪でしょ?」
「そうじゃないの?」
「ねえ」
 五人は今の明日夢の言葉に言い合うのだった。
「だから入院してるんじゃないの?」
「先生達そう言ってるし」
「私もそうは思うわ」
 明日夢もとりあえずそう思ってもいるのだ。
「けれど。何か引っ掛かるのよね」
「風邪にしちゃ少し入院が長くない?」
 茜もやって来た。五人と三人でそれぞれ話す。
「そんな気がするけれど」
「そういえばそれも」
「おかしいような」
「確かに」
 また五人は話を聞いて顔を見合わせた。
「おかしなことばかりっていうか」
「何なのかしら、本当に」
「今の状況って」
「少なくとも今は様子見の方がいいわ」
 恵美はこう考えているのだった。
「今はね」
「今はそうなの」
「そうした方がいいわ」
 そしてまた五人に告げるのだった。
「とりあえずはだけれど」
「とりあえずって」
「どの位?」
「三日?」
「それとも一週間?」
「それはわからないわ」
 このことに答えることは無理だった。
「けれど」
「ちっ、何なんだよ」
 春華はたまりかねたように舌打ちした。
「何もできねえじゃねえかよ」
「こうなったらあちこちの病院見て回る」
「そうね。手分けして」
 静華と凛はこんなことを言い出した。
「そうすれば見つかるかも知れないし」
「もう入院できるような病院なら何処でも」
「それは無理よ」
 だが恵美はこれを止めるのだった。
「残念だけれどね」
「無理って」
「何でよ」
「下手に動き回ったら変質者に思われて通報されるわよ」
「通報って」
「別にそんなのじゃないのに」
「けれど怪しまれるのは間違いないわ。そのうち病院の間で知られるようになるし」
 このことも注意する恵美だった。彼女の頭脳がここでは助けになっているのは間違いなかった。それは五人にとってだけではなかった。

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