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レーヴァティン
第百八話 善行がもたらした果報その九

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「酔って暴れるとかな」
「それは駄目だからね」
「特に今のわし等はのう」
「立場が出来たからね」
「立場なんて思うちょった」
 右目を瞑っていつもの袖の前から右手を出して顎に手をやる仕草になってだ、当季はまた桜子に言った。
「ずっとのう」
「それがね」
「違ってじゃ」
「あたし達もね」
「立場が出来てぜよ」
 それでというのだ。
「表ではちゃんとじゃ」
「礼儀正しくて威厳もあるね」
「そんな人になってぜよ」
 そのうえでというのだ。
「皆の前でおらんといかん」
「そうなんだよね」
「だからじゃ」
「和歌山城でもね」
「わし等はじゃ」
 まさにと言うのだった。
「威厳のあるな」
「この世界を救う者達だったね」
「そうぜよ、だからぜよ」
「辛かったね」
「全くのう」
「拙者はあまり」
 智はだった、自分で当季達に話した。
「どなたと飲んでいても」
「辛くないんじゃな」
「はい」
 こう当季に答えた。
「普段からこうでござるから」
「それはそれぞれの地ぜよ」
「本質ですね」
「その人の持つのう」
「そして拙者は」
「お前さんは真面目ぜよ」
 当季は智のその保湿も指摘した。
「普段から、地がぜよ」
「だからでござるか」
「皆と飲んでもじゃ」
 表でそうしてもというのだ。
「砕けなくてじゃ」
「苦労もしませんか」
「素が出てしまわない様に気を使ってもじゃ」
「左様ですか」
「まあのう、明治帝も」
 当季はここで一人の偉大な帝の話をした。
「飲まれるのがお好きでじゃ」
「日本酒派だったそうでござるな」
「それでぜよ」
 このことはしっかりと文献に書き残されている、清酒を飲まれて感激されてそれからいたく愛されていたのだ。
「よく飲まれていたとのことじゃ」
「そして羽目を外して」
「侍従長さんにぶん投げられたぜよ」
 このことは史実にはっきりと書かれていることだ。
「投げた侍従長さんも凄いぜよ」
「帝への諌めにしても」
「よくそこまで出来たぜよ」
「そして帝も咎められなかった」
 自分が悪いとされてだ。
「凄いお話でござるな」
「全くぜよ、それでその明治帝もぜよ」
「お酒がお好きで」
「そうしたことがあったぜよ」
 羽目を外されて投げられたというのだ。
「わし等は帝よりは遥かに立場が低いがのう」
「それでもでござるな」
「やっぱり立場が出て来たぜよ」
 着物の前から出した右手を顎に当てたままでだ、当季は言った。右目はこの仕草でいつもしている様に右目を瞑っている。
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