三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第30話 気候区分図 ー青い空よりも高く−
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は毎年の数値にブレがあるだろうし、できれば数十年間のデータが欲しいところだ。
もちろんそれでは時間がかかりすぎるうえに、無数の人員が必要となる。現実的ではない。
そこでシドウの師匠は、その地域の『植生』に注目した。
それまで長い時間をかけて世界中で集めてきた、膨大な量の植物のスケッチや標本。植物は足がなく動けないため、その地域の気候をよく反映している。それをもとに各地の気候を推測し、区分図を作成したのである。
説明を聞いた女王は、感心したように唸った。
「なるほどな……植物から気候を推測、か」
「はい」
「今までその発想に至った者はいなかった。やはりその辺はあのジジイならではというところか」
「もともと師匠は植物が大好きでしたので」
修行時代を思い出しながら、シドウは言った。
なお、隣のティアも話を聞いていないわけではないようだが、完全に専門外の話だ。内容についていけているかは定かではない。
「花や実、野菜が好きというのはわかるが……。それ以外の草や木まで好きというのは私には理解できん。どんなきっかけがあればそうなるのだか」
「それも師匠から聞いています」
「ほう。聞きたいな」
「では説明させていただきます。師匠がまだ若いころ、地表を雲よりもずっと高いところから見たらどう見えるのだろうかと、ふと考え――」
「雲よりもずっと高い?」
いきなり遮られてしまう。しかし、それも当然かもしれないとシドウは思った。
「はい。ドラゴン姿でもそこまで高く飛ぶことはできませんので、自分もよくわからないのですが。城など人が造ったものが完全に見えなくなるくらいの高さから……おそらく、青い空よりも高く――ということだろうと思います」
「ふむ。それで?」
「はい。師匠は、それくらい高いところからこの世界を見たら、大変に美しい絵が見えるだろうと思ったそうです」
「……」
「絵を構成するものとして一番わかりやすいのは『海と陸』という単純な違いで、海のほうについては一様な濃紺に見えるだろうと考えました。一方、陸側のほうでは非常に複雑で美しい模様が見えるのではないかと思ったそうです。
当時の師匠は、その模様を作っているのは、まずは『緑なのか、そうでないのか』であろうと考えました。緑でない……つまり植生に覆われていない理由としては、寒すぎるか乾燥しすぎているかのどちらかです。それを分ける要因となっているのは、気温・降水量ということになります。
そしてさらに、緑の中でも、その色や質感に大きな違いがあり、それがまた模様の美しさの重要な要素だろうと思ったそうです。それは植物相の違いがもたらすもので、何が植物相を違わせるかと言えば、気温・降水量・土壌・動物相といった、この世界の自然そのものです。
そ
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