三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第30話 気候区分図 ー青い空よりも高く−
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不可能です。体力とはまた違った力を消耗するようで、例えば一日中変身し続けるというのは無理です」
その答えに、女王が吹き出す。
「?」
なぜ笑われたのかわからないシドウに対し、女王は言った。
「私は素直な男は好きだ。だが一つ忠告しよう。あまりそうやって簡単に手の内を見せるべきではない」
「そうなのですか?」
「そうだ。お前はこの先もずっと人間の味方かもしれないが、人間がこの先もずっとお前の味方とは限らないぞ?」
「……」
女王は笑みを浮かべたままだ。声の調子も穏やかである。
だが、シドウはとても恐ろしいことを言われた気がして、背筋が寒くなった。
その様子に気づいたのか、気づいていないのか。女王はまた次の話に入る。
「今日呼び出したのは、もちろんお前たちに対する好奇心ということもあったが。それだけではない」
「……?」
「資料にはお前の師匠のことも書いてあってな。ウラジーミル・ピーターという懐かしい名前を見た」
「私の師匠をご存じなのですか?」
「ああ。私はこの国の王になる前、農業ギルドの顧問をやっていたことがある。そのときに接点があったのだ。そうだな……冒険者ギルドの壁にこの世界の気候区分図が貼ってあっただろう? あれは私が当時あのジジイに依頼して作らせたものだ」
「そうだったのですか」
ここにきて自分の師匠の話が出てくるとは思わなかったうえに、女王が『ジジイ』と呼んでいる。シドウは素直に驚いた。
「何年かかってもいい――そう言ったのだが、あのジジイは気候区分図をたったの三十日で作ってきた。しかも、どうやらかなり正確らしいものが仕上がってきてな。あの図は今でも、新規の農家や未知の地へ行く冒険者にとっては助けとなっている」
呼び方はともかく、シドウの師匠に対する評価は、女王の中で高いようである。
いまの言葉を聞けば、師匠も喜ぶのだろうか? とシドウは考えたが、やはり「ないな」と思った。シドウの知る師匠ウラジーミル・ピーターは、とても権力者からの評価で喜ぶような性格ではなかったためだ。
「だが、私はその種明かしを聞いておらぬ。あの偏屈なジジイは物を出すだけ出して、どこかに行ってしまった。もしお前が製作過程を知っているのであれば聞きたい」
これについては、もちろん秘密にすることではない。
「はい、あれはその土地の植生に注目することで、効率のよい製作を可能にしたと聞いています」
シドウは知っていることを説明していった。
正攻法でいくのであれば、この世界のいたるところに無数の気象観測ポイントを設置し、降水量や気温の数値を取らなければいけない。しかも当たり前ではあるが、最低でも一年は観測を続けなければ年間データは取得できない。さらに言えば、実際に
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