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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
Zクラス
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「あ、ああ。こちらこそよろしく」
「ははぁーっ!」

 さらに別の生徒が突然目の前にフライング土下座してきた。

「お、お、お、おおおっ! おそれ多くもリッツバーグ伯爵のごしゅそっ……ご子息のめゃめっ、見目麗しきごしゅそぅ、御尊顔を拝したてまちゅ、奉り、わたくしめ恐悦至極に存じ奉りまする〜」

 馴れない言葉を無理して言っているのか、所々噛み噛みだ。

「……地位や権力を振りかざし、さんざん横暴な振る舞いをしてみんなを不快な思いにさせた俺が言うのもなんだが、学院内でそういうのはやめてくれ。普通に話して欲しい。俺はただのカート。君の名は?」
「へぇ、おらはチャーザー村のビーダーマイヤー言います。伯爵様からひとかたならぬご恩顧をいただきまして、感謝感激雨霰〜!」
「ああ、そういえば領内にそんな名前の村があったな」

 アールスハイド王国では基本的にその土地を治めている領主の名前がそのまま街の名前になっている。治めている領主が自分の家名を冠している街に誇りを持ち、責任を持って統治させるためである。とはいえ領土が広く複数の街や村がある場合はすべておなじ名前にすることもできず、その土地に古くからある名で呼んでいた。
 チャーザー村のビーダーマイヤーは村の日曜学校でその学力を認められ、魔法学院に入学したという。
 貴族など一部の富裕層しか教育を受けられないブルースフィア帝国とは異なり、アールスハイド王国では一五歳以下の子どもは等しく教育を受ける権利を要し、義務教育と呼べるものになっている。そのため読み書き計算の達者な者はこのビーダーマイヤーのようにリッツバーグ伯爵のような有力者の援助を受け、さらなる高みを目指して魔法学院に入学をゆるされるのだ。
 ここZクラスは、そのような者のための受け皿として存在していた。

「しかしこのあつかいは……、歴然たる差別じゃないか」

 釈然としないまま幾人かの生徒と自己紹介を済ませていると、授業が始まる。

「うぃ〜す、本日の一時限目の授業は自習にしまーす」
「いきなり自習か……」
「あ〜、眠い。二時限目も自習自習」
「……」
「え〜っと、自習にしま〜す」
「…………」
「ふぅ、食った食った。眠いか自習な〜」
「なんなんだ、このやる気のないロクでなし教師は!?」

 グレソ=ルーダスという担任教師は恐ろしくやる気がなかった。うたた寝から覚めてたまに教壇に立ったと思っても、だらだらと間延びした声で要領を得ない。魔法理論の講釈を読み上げ、時々思い出したかのように黒板に判読不能な汚い文字を書き散らかす。
 そんな授業を受ける生徒らといえば、半数はロクでなし授業からもなにかを学ぼうと真面目に受け、残り半数は眠りこけていたり、授業とは関係のない内職をしていた。



 
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