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魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
第68話 過去語 一
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早く、早く逃げなきゃ。


◇ ◇ ◇


マフィアを抜け出して、何回めの朝。
毎日灰色の天井と睨めっこしていた日々が懐かしい。

「よぉ、嬢ちゃん。こんなとこで寝てるなんて、駄目だろ?」

横から声。寝起きでぼーっとする意識を頭を振る事で無理矢理活性化させながら、横を向く。
そこには、いかにも「ヤクザです」みたいな格好をした男共が、十人くらい並んでいた。

「……はぁ? アンタには関係ないでしょ。クソ野郎共が、私に話しかけてくんじゃねえ」
「なっ……アニキになんて口きいてんだクソ餓鬼??」
「女の分際で、調子に乗ってんじゃねぇ????」

うるさい。うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい。

“女の分際で”だって? 私はそんなにヤワじゃない。

うざい。うざいうざいうざいうざいうざい。


「……………………てめえらイラつくんだよ。だから……死ねよ」


「はいストップストップー」

また横から声。高そうな革靴の踵をコツコツと鳴らしながら、おちゃらけた声とともにまた人が増える。
今度は一人だけ。これまた高そうなスーツを着込んで、髪をしっかりと整えたヤバそうな奴。

警察か?

「君達は巷で噂になっているヤクザで間違えないですね?」
「だとしたらなんだよ。今、イラついてんだよ。失せろ」

ヤクザが警察らしき男に暴言を吐いた直後、一瞬にしてピリッと張り詰めた空気になる。
この警察野郎、ガチギレ状態。

「………あ゛あ? 調子乗ってんじゃねぇぞクソヤクザ。すぐにしょっぴいてやる」

“しょっぴく”……署まで強制連行って訳か。
だったら、死んだ方がこのヤクザ共は嬉しいのでは?

気付けば目の前にヤクザ共は居なかった。
今は足元で、寝ている。

「……クソ餓鬼。警察が見てる前で殺したぁ、いい度胸じゃねえか」
「嗚呼、警察なんて居たんだ。そこに転がってるブタ野郎と全く同じ様な感じしてたから、気付かなかったわ」
「……お望み通り、直ぐに豚箱に突っ込んでやるよ」
「やれるもんならやってみろよ、クソポリ公」

またマフィアで殺しをやっていた時から愛用している、折りたたみ式のナイフを取り出して???

「え……?」

刃を見て……否、“刃があったはず”の部分を見て絶句した。

「……ん? 何ですか、其れは。とても、武器には見えませんけど」

刃が完全に無くなっている。使っている途中で折れてしまっていた様だ。
なんでそんな重大なことに気付かなかったのだろう。

「……なんでこんな時に折れてるんだよ……使えねえな
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