【代われるのなら】
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ネジ兄さんは、そう簡単に助けを求めるような人じゃない。まして、私になんて───
ネジ兄さんが宗家を憎んでいた時期、私に憎しみだけを向けてきたわけじゃない。寧ろ多少なりと気遣ってくれていたようにも感じる。
そうでなければ、中忍試験試合の予選で何度も棄権を勧めたりしないだろうし、私が忍に向いていない事を優しすぎるとは表現しないだろうし、何よりもあの時私が余計な意地を張って余計な事を言わなければ、上忍の先生方が数名止めに掛かるほどネジ兄さんを怒らせてしまう事もなかったはずなのに。
「ネジ兄さん、その……、助けが必要な時は、いつでも言って下さいね。私じゃ、頼りにならないかもしれないけど……なるべく、助けられるように頑張りますから」
思い切ってそう言ってみたけれど、ネジ兄さんはいつものように特に表情を変えない。
「……宗家のあなたがそれを言うべきではないのでは」
「宗家や分家は関係ないです。私は、ネジ兄さんの助けになりたくて……」
「その気持ちだけで、十分です。今は特に、助けは必要ありませんから」
ネジ兄さんは、少し困ったように微笑んだ。
そう……やっぱり私じゃ、助けにならないんだ。あの時は不可抗力だったとしても、自分の父の死のきっかけを作ってしまった私の助けなんて求めるはずは──
また、夢を見た。
今度は、誰もネジ兄さんを知らない夢。
まるで、最初から存在していなかったかのように。
私だけは知っている、覚えているはずなのに、本当のネジ兄さんを忘れたみんなと同じように私まで、忘れてしまいそうな感覚に陥る。
嫌……いやだ、わすれたくない。
助けて……、たすけて、ねじにいさん───
『ほら、あんたはそうやって助けを求めるばかりで、おれを決して救えはしないんだ』
また、あの子の声だ。幼い頃の、あの人の───
私の勝手な、夢の中での解釈だ。ネジ兄さんが本当にそう思ってるわけじゃない、はず。
どうして、こんな夢ばかり見るんだろう。
私は、ネジ兄さんをどうしたいの。
どうして、ほしいの。
「ネジ兄さん……、居なくなったり、しませんよね」
長期任務に赴く兄さんの片手を離したくなくて、ぎゅっと掴んだ。その手は、思った以上にひんやりとしている気がした。
「居なくなりませんよ。……俺は、そう簡単には死ねないので」
私を安心させるように、微笑を向けてくれるネジ兄さん。
「……手を、離してくれませんか。俺はもう行かないと」
静かな口調でそう言われて、私が掴んでいた手の力を段々と弱めると、ネジ兄さんのすらりとした長い手がするりと私の手を離れてゆくのを
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