【代われるのなら】
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んだろうと思う。
自室の布団からおもむろに体を起こし、早鐘の心臓を落ち着かせようと深呼吸をして息を整える。
──そうだ、今日はネジ兄さんに修行をつけてもらう約束をしている。ネジ兄さんが上忍に昇格してからは、なかなか時間が合わないから、二人で修行出来る時間を大切にしないと。
急いで身支度を整え、日向家の外の修行場に向かうと既にネジ兄さんが佇んで居た。……何だろう、その後ろ姿がとても儚く見える。まるで今にも、ふと消えてしまいそうなほどに。
思わず私は手を伸ばした。その姿を消してしまわないように、自分の手の中に留めようと。
……私の手が届く前に、ネジ兄さんは振り向いた。その端正で精悍な顔立ちは大体いつも無表情だけれど、稀に見せてくれるようになった優しい微笑が、私にはたまらなく嬉しかった。
「お早うございます、ヒナタ様。……顔色が優れないようですが、今日の修行はやめておきましょうか」
「いえ、大丈夫です……。お願いします」
ネジ兄さんは上忍として忙しい中、私の修行に付き合ってくれているんだもの、ちゃんとしないと。
──けれど、修行に身が入らない。夢の中の事を引きずったって、しょうがないのに。
『あんたじゃ、おれは救えない』
夢での幼子の低い声が、頭の中に木霊する。
「……ヒナタ様、ここまでにしておきましょう。無理をするのは良くない」
ネジ兄さんが落ち着いた声音でそう言って、すぐに今日の修行は終わりになった。
……また、気を遣わせてしまった。私の悪い癖だ。
私はこれまで、ネジ兄さんに何をしてこれたんだろう。何かをしてあげてこられたんだろうか。
迷惑ばかり、掛けている気がする。助けられてばかりいると思う。
でもネジ兄さんには、はっきりと“助けて”とは言えない。ネジ兄さんには寧ろ私が助けてと思う前に助けてもらっていると思う。
助けて、なんて……私が言うのは烏滸がましい。宗家として助けてもらうことは決して当然の事じゃない。仲間としてならまだしも、“宗家だから”なんて……
私の付き人ともいえるコウさんだってそう。私が宗家だから何かと身の回りの世話をしてくれて守ってくれる。……けどそれが当然の事とは私は思いたくない。
和解後のネジ兄さんも、結局は私を宗家としてしか見てくれてないんだろうか。宗家だから何かと気にかけてくれるし、修行にもいつも快く応じてくれるんだろうか。
それに和解といっても、実際はネジ兄さんと当主の父が和解したのであって私はそれに便乗する形になったにすぎない。確かにネジ兄さんは以前より柔和に接してくれるようになったけれど、いくら和解したといっても、手放しで信頼してくれるわけでもないと思う。
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