【代われるのなら】
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『たす、けて……。たすけて、よぉ……っ』
幼い子の、助けを求める泣きじゃくった声がする。
周囲は真っ暗で、何も見えない。白眼を発動させようとしても、何故か出来なかった。
「大丈夫……大丈夫だよ、すぐ近くに居るから。あなたをちゃんと、見つけるから」
泣いているらしい幼子に安心させるように声を掛け、その気配を頼りに手探りで捜す。
「……あ」
何かが急に脚回りにしがみついてきて驚いたけど、幼い子供の方からこちらを見つけたみたいだった。
『たすけて……ねぇ、たすけてよ……っ』
周囲は余りに暗く、顔を窺う事も出来ないけれど、必死で助けを求めているのは分かる。
「こんな、真っ暗な中とても怖かったでしょう。お姉さんが付いてるから、もう大丈夫だよ。助けてあげるから、ね?」
『ほん、と……?』
幼子が顔を上げたような気配がした。……その時だった、ぼんやりと浮かぶ緑色のその独特の紋様を目にしたのは。
(私、は……“これ”を、知ってる……。日向の分家の人達が、宗家を守る為に強制的に額に刻まれる、籠の中の鳥を意味する───)
『お姉、さんが……助けて、くれるの……?』
顔は相変わらず暗闇で見えない。……だけどまるで、そのぼんやりと浮かぶ紋様だけが不気味な色を増し、訴え掛けてくるようだった。
『おれを……おれの、父さまを……助けて、くれるの?』
(この子、は……“この子”は、まさか)
『助けてよ……ねぇ助けて。こわいんだ、くるしいんだよ……お願い、助けて』
光も無いのに、煌めく涙の筋が黒い頬を伝うのが見え、どうしようもなく心が痛んだ。
「ご……ごめんなさい、私……私じゃ、あなたを……助けて、あげられない」
(だって“あなた”は……私じゃ救えるはずがなくて、ナルト君に───)
『うそつき』
「……!」
『さっき、助けてあげるからって、言ったのに』
先程まで泣いて震えていた声が冷たく、低い声に変わっていた。光る涙の筋も無くなり、顔の部分の額と思われる箇所からは鈍く卍の印だけが浮かび上がっている。
『……そうだよ。あんたじゃ、おれは救えない』
縋り付いていた脚元からいつの間にか離れられてしまい、遠のいてゆく幼子の存在に酷く動揺し自責の念に駆られる。
「待って、行かないで。私……私だって、本当は」
──私はそこでハッと目覚めた。いつの間にか、片手を天井に向け手の平を伸ばしている。
……夢だと分かっていても心臓は早鐘を打ち、冷や汗が額の横を伝っていくのを感じた。
夢の中の事だから、私の自分勝手な解釈で現れ出た幼い頃の、父親を失ったネジ兄さんな
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