三章 天への挑戦 - 嵐の都ダラム -
第29話 棺の大魔王
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告を受けた。シーサーペントをそそのかして、人間の冒険者の死体を大量に確保する予定だったのだが、ドラゴンに変身する少年の邪魔が入ったそうだ」
「それは……」
「まあ、同一人物だろうな」
「いかがなさいますか。放置は危険かと思われますが」
ダヴィドレイは顎に手をやった。
「ふむ……。そのハーフドラゴンは、こちらの組織のことをよく知らないはずだ。まずは味方に付けられそうかの判断が必要だろう」
「味方に、ですか」
二人のうち顔を出しているほうは、やや意外なことを言われたのか、聞き返すかたちとなった。
「もともとドラゴンは魔王軍の一員であったわけだからな。我々『新魔王軍』はまだ同志が少ない。そのハーフドラゴンが味方になるのであれば、非常に頼もしい存在となるだろう。まずはこちらに引き入れることを考え、それが無理だと判断すれば消すようにすればよい」
「――ダヴィドレイ殿」
その突然の声は、この謁見の間の入口の方角から聞こえた。
ひざまずいていた二人も振り向き、その声の方角を見る。
「エリファス……いたのか」
「興味深いお話ゆえ、聞かせていただきました」
エリファスと呼ばれた男は、銀色の髪を後ろだけ束ねた、騎士風の青年だった。金属の鎧に身を包み、赤いマントを着けている。
その青年は、赤いじゅうたんの上を歩いてきて、黒ローブの二人の横に出た。
立ったまま左手を胸に当て、一礼する。
「その役目、ぜひこのエリファスに」
エリファスと名乗ったその男はそう言った。面白そうな笑みを浮かべながら。
ダヴィドレイは少しだけ考えたが、その志願を受けた。
「では任せるか」
「ありがとうございます」
また立ったままの礼。
「もちろん説得には全力を尽くしますが。仲間にならないことがわかれば、その場で戦ってもかまわないのですね?」
「ああ。かまわない」
ダヴィドレイは即答したが、黒ローブ二人組のうちフードをかぶっているほうは懸念を口にした。
「エリファス殿。かつてドラゴンは味方であったから当然かもしれないが、同志のなかにドラゴンとの戦闘経験がある者はおらず、いまだその能力は計り知れないものがある。念のために一人ではなく、屈強な戦士を複数人連れて行ったほうがよいと思うが」
エリファスは、面白そうな笑みを浮かべたままだった。
「お気持ちは感謝するが、私は一人のほうが性に合っているな」
そう答え、再度ダヴィドレイに一礼して去っていった。
その背中をダヴィドレイは途中まで追うと、ふたたび黒いローブの二人に視線を戻した。
「お前たちには明日からは新しい仕事を頼むことになる。今日は休むとよい」
二人組も礼をして下がってゆく。
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