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ある晴れた日に
433部分:夏のそよ風吹く上をその十六
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ええ」
 それだというのだった。言葉を出す江夏先生の顔はこれまでになく辛いものになっている。その顔で田淵先生に対して告げていた。
「もうね。本当にね」
「廃人、ですか」
「信じられないわよ。いや」
 江夏先生は自分の言葉を変えた。
「信じたくないわよ」
「そうですか」
「それでも。明日ね」
「行きます?」
「行かないと。いけないわ」
 言葉は沈痛なものになっていた。心の全てが痛む様に。
「だって私達は」
「そうですね。ですから」
「行きましょう」
 あらためて田淵先生に告げた。
「私達が行かないとね」
「わかりました」
 そして田淵先生も頷いたのだった。
「一緒に」
「御家族は私達なんかよりずっと辛いし」
「はい」
 今度出された言葉はこれだった。
「だから。絶対にね」
「背負うことが今は責任ですか」
「逃げたら。終わりだから」
 二人で言い合うのだった。
「だからね。行きましょう」
「わかりました」
 二人の先生達も何かが変わろうとしていた。それは非常に重苦しく。とても重苦しい何かが宿りその中で苦しもうとしているのだった。


夏のそよ風吹く上を   完


                  2009・8・25

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