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遊戯王BV〜摩天楼の四方山話〜
ターン11 鉄砲水の襲撃者
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地へと送られた青い小鳥を絡めとった。触手を通じてその生体情報は貪欲なスターヴ・ヴェノムへと流れ込み、掲げたその片手にはそのデータをもとに再現された、鳥の顔を模した仮面が浮かび上がる。
 スターヴ・ヴェノムのレベルは8、これが通りさえすればカードの効果を受け付けず、攻撃力は6800。しかも毎ターンメインフェイズに致死量もの4000バーンを無造作に放つ恐るべきコンボが成立する。だが勝ちを確信した彼の耳に、少年が動くさまが見えた。

「とんでもないコンボだ……でもその仮面を被る前、今この瞬間なら効果が通る。幽鬼うさぎの効果発動!既にフィールドに存在するカードが効果を発動した時、このカードを捨てることでそれを破壊する!派手にやっちゃって、うさぎちゃん!」

 瞬間、銀色の閃光が走った。1度ならず2度、3度と、今まさにその仮面を装着しようとしていたスターヴ・ヴェノムの体を断ち切るかのように硬質な輝きが尾を引く。
 そして次の瞬間、その手にした仮面が最初に走った銀の軌跡に従うように2つに割れた。次いで、2番目に走った銀の軌跡によって無数の触手が一斉に断ち切られ、拘束から解き放たれて再び自由を手にした青い小鳥の体が力なく墓地へと帰っていった。さらに3度目、4度目の軌跡が残した残光に従うかのように紫毒の竜の体が切り裂かれ、切断面からゆっくりと別れていく。
 そして勝利の咆哮は断末魔の呪詛へと代わり、大地に倒れ込んだ竜の頭部に駄目押しのように凄まじいスピードで飛来した鎌が深々と突き刺さった。その投擲主は、和装に身を包み霊魂を従える銀髪の少女。竜の瞳から完全に生気が消えたことを確認した少女は、自らの主たる少年に対したった今見せた鬼気迫る攻撃とは裏腹に小さく微笑むと、儚げに手を振って消えていった。

「『幽鬼うさぎ……まさか握っていたとは』」

 失敗した、そんな思いを込めて呟く鳥居。先攻1ターン目からパーツの揃った今のワンターンキルを止める手段は、数あるデュエルモンスターズのカードの中でもかなり限られている。スターヴ・ヴェノムそのものを無力化するエフェクト・ヴェーラー、インディペンデント・ナイチンゲールを墓地から引きはがすD.D.クロウ、効果ダメージへのメタとなるライフ・コーディネーター……いずれにせよごく一部の手札誘発のみであり、カードパワーはともかく現環境においてサイドデッキならばまだしもメインからの投入率はどれもお世辞にも高いとはいえない。そしてその中の1枚が、まさに今仕事をした幽鬼うさぎである。

「僕が握ってたんじゃない、基本的にこの子はいい子だからね。僕を助けに来てくれたのさ」

 そう茶目っ気たっぷりに笑って返す少年が、そっと幽鬼うさぎのカードを指で撫でてから墓地へと送る。今のワンターンキルが失敗したことで鳥居の場に残るモンスターはリ
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