ターン11 鉄砲水の襲撃者
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を巻く糸巻の前で、少年が生き生きと手を伸ばす。
「暗黒の扉を破壊する手段は、今の僕の手札にはない。だけど、なら1体の攻撃のみで終わらせればいい!ジズキエルとコーラルアネモネをリリースし、アドバンス召喚!これが僕の切り札、霧の王!」
ジズキエルの体が、そしてコーラルアネモネの姿が、ともにあっさりと霧散する。霧に包まれ消えていくその向こう側に佇むのは、全身を鎧に包み大剣を手にした魔法剣士。
霧の王 攻0→5300
「そして霧の王の攻撃力は、リリースしたモンスターのそれの合計値となる」
「『く……』」
「これで終わり。バトルフェイズ、霧の王でダイレクトアタック。ミスト・ストラングル!」
霧の王 攻5300→鳥居(直接攻撃)
鳥居 LP3000→0
「……はい、終わり。悪いね、今回はさすがに悠長なことは言ってられないのさ。ほれ、立てる?」
「こーんな子供にワンキル返し、それもオーバーキルなんて喰らうとは……俺もだいぶ焼きが回ったかね」
ぼやきながらも少年が伸ばした手を掴み、身軽に立ち上がる鳥居。意外にもこのデュエル、「BV」の管理下にはなかったらしい。となると、少なくともこの男はテロリストとは関係がないのか?
尽きない疑問は一度脇によけ、試合終了と同時にちょうど吸い終えた煙草を携帯灰皿に放り込んだ糸巻がとりあえずヤジを飛ばす。
「なーに言い訳してんだアホ、負けは負けだろうが」
「いやま、そりゃそうっすけどさあ」
「じゃあ3人とも、悪いけど約束は守ってもらえるかな。こっちも、できるだけ早めに取り掛かりたくて」
よほど時間に余裕がないのか、明らかに落ち着かない様子で少年が声をかける。正直糸巻も鳥居も納得できないことは多いが、それはそれとして彼らにもデュエリストとしての矜持はある。渋々ながらも頷くと、少年は明らかにほっとした顔になった。
「ならよかった。じゃ、まったねー!」
こちらが約束を守ることを疑ってすらいないのか、立ち去るのを確かめようともせずにくるりと向きを変えて闇の中へと走りだす少年。その背中に、糸巻が最後に声をかける。
「待った。まだアタシら、アンタの名前も聞いてねーぞ!」
その言葉に足を止めた少年が、ほんの1瞬だけ振り返る。
「……遊野。遊野清明、別に覚えなくてもいいよ」
その言葉だけを残して今度こそ、その姿は消えた。
「あ、あの……」
「何も言わないでほしいね、八卦ちゃん。糸巻さん、今日のところはもう帰りましょう」
「そーだな」
そんな会話を最後に、残る3人の姿もまたその場を後にする。数か月ぶりに賑わっていた廃図書館に、再びいつもの静寂が戻ってきた。
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