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アジア的優しさのこいし
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彼女の能力を最大限利用できる舞台を、部隊を、用意したのだ。
 最初は、恐ろしかった。自分の能力で、処刑台へと送られていく人や妖怪を見るたびに、怖くなった。


 シベリア送りだって自分が考えた。フランドールがすぐに粛清してしまうのをみて恐ろしくなったのだ。
 こんな話がある。レミリアを批判する詩を書いたとある男は、フランドールに尋問された結果『自白』したという――――無事なのは右腕だけだった。自白調書にはサインが必要だからである。
 しかしながら、こいしが来たことでそのような『自白』はなくなった。彼女は自分が『自白』を減らすのに貢献できて単純に嬉しかった。だから、次は待遇を良くしようとしたのだ。


・シベリアで木を数える仕事
・シベリアで日光を観察する仕事


 このお仕事はこいしの発案である。誰でもできる簡単なお仕事だと彼女は自負している。そんな彼女のお陰で、シベリアは今でも林業と観光業が盛んである。こいしのアジア的優しさの表れといえよう。


 ある日、スメルシ(スパイに死を)として活動していたとき、スパイをあぶり出して、心を読み人類統合体の大規模侵攻計画を入手した。
 結果として、情報を入手したソ連側の先制攻撃により、100万人の将兵が死傷した。
 

 今までと桁の違う犠牲者数を見て、怖くなった。しかし、怯えるこいしに、フランドールは言い放ったのだ。


『一人の死は悲劇だが、百万人の死は統計上の数字に過ぎない』

『死はすべてを解決する。人が存在しなければ問題は起こらない』

『愛とか友情などというものはすぐに壊れるが、恐怖は長続きする』


 恐怖心から依存しようとしたのかもしれない。こいしは、すっかりフランドールに心酔した。フランドールのために、喜々として粛清を行うようになり、恐怖は快楽へと進化した。
 

 こうして立派なサディストが誕生したのである。


 ――――再会したこいしの姉は号泣したという。
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