421部分:夏のそよ風吹く上をその四
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夏のそよ風吹く上をその四
「だから皆そこは気をつけてね」
「ちぇっ、折角枝豆楽しく食ってるのによ」
「この唐揚げも」
それにビールである。見ればそのビールはどれも黒いものである。所謂黒ビールだ。
「門限あるなんてな」
「少しどころじゃなくてかなり残念よ」
「残念だけれど」
しかしそれでも飲む彼等であった。飲み続けるのには変わりがなかった。
ビールは飲み干すとその傍から立って自分達でジョッキに注ぎ込んでいく。そうしてセルフサービスでどんどん飲んでいくのであった。
「まあこの黒い麦のビールはね」
「美味しいんだよな」
「かなりね」
無理矢理ジュースであると言い切ってさえいる。
「まあ先生が来てもジュースって誤魔化して」
「それでいいからな」
それで話が収まるのがこの学校であり町であるのだ。
「何か痛風になりそうな気もするけれどな」
「じゃあワインにすればいいし」
「焼酎でも」
どちらにしても飲むのだった。
「日本酒は糖尿になるけれどな」
「焼酎とかワインだったら大丈夫だから」
「そうだよな。ワインだよな」
「それか焼酎でも飲むか」
これでこの話は終わった。しかしそれでも馬鹿話自体は続くのだった。今度は。
「それでよ。どうするんだ?」
「どうするんだって何がだよ」
「急に何なんだよ」
今言ったのは佐々だった。皆その彼に問い返したのである。
「急にどうするんだって言われてもよ」
「わかんないんだけれどよ」
「まだ何か食い物いるか?」
彼が問うたのはこのことだった。
「食い物よ。まだいるか?」
「んっ?ああ、そうだな」
「そういや唐揚げ随分減ったな」
「枝豆もな」
「だからだよ。何かいるか?」
あらためて皆に尋ねるのだった。
「それで何がいいんだ?」
「そうだな。あっさりしたいしな」
「豆腐がいいんじゃないかしら」
話に豆腐があがるのだった。
「お豆腐。冷奴にしてね」
「それでいいよな」
「ねえ」
「よし、じゃあ豆腐だな」
佐々はそれを聞いて納得した顔で頷くのだった。これで決まりだった。
「身体にもいいしな、豆腐は」
「しかも食べやすいしね」
「そうそう」
そうした理由もあるのだった。とにかく豆腐というものは何かと利点の多いものである。栄養があるだけでなく淡白で食べやすいのである。それで皆豆腐を選んだのだ。
「脂っこいだけじゃまずいしな」
「そういうのも食べないとね」
「だから豆腐ね」
また佐々に告げるのだった。
「佐々もそれ食べるわよね」
「あんたも飲んでるの?」
「いや、飲んではねえよ」
だが佐々は厨房からこう皆に答えるのだった。店の厨房に一人で入っている。
「俺は今はな」
「やっぱり仕事中だからか」
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