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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
魔人変生
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ていた彼とは異なりカートは瘴気をはらんだ魔力を無尽蔵に放出していた。
 そこにいるだけで被害は拡大する一方だろう、早急な対策が必要だった。
 聖なる輝きを放つ鞭が唸りを上げてカートの身を打ち据え、そのたびに光の飛沫が飛ぶ。
 突如、法眼は身体から魂が離れて浮上するような不思議な感覚をおぼえた。
 唸るような風の音を聞きながら、重力を始めとしたあらゆる足場から逃れ、現実に重なる宇宙のような異なる空の世界にゆっくりと浮遊する。
 無数の光が、数多の星々が視える。この光のひとつひとつが人だ。人の運命だ。
 深淵の彼方、時間や空間の概念すら異なるすべての要素が偏在化している宇宙。その宇宙に法眼の観念が反映され、遠くにある現実の影を目の前に顕現させる。あるいは現実世界のすべてを凝縮し、縮図のように映し出す。千里眼のような感覚で宇宙を見渡していくと――。
 星のひとつに陰りが見える。濃い闇が星を覆い、取り込もうとしている。
 カートの星だ。

「――ッ!?」

 ここではないどこかで魔人化したカートと黒い髪をした青年が戦っていた。
 青年は火弾を放つと同時に背後へと回ると、刀身が振動する奇妙な剣を振るい、カートの腕を斬り落とす。
 カートも負けじと炎を呼び出し応戦するが、青年は水の刃でそれを切り裂き、振動剣で追撃。さらに爆裂火球を浴びせ圧倒。
 満身創痍となったカートだが、その闘志と殺意に陰りを見せず、なお戦おうと魔力を高める。
 その首に、容赦なく刃が打ち込まれた。
 高速で振動する鉄の刃が皮膚を裂き、肉を切り、神経や血管を焼き切り、骨を断つ。
 カートの首がボトリ、と地面に落ちた。焼き切れた切断面からはほとんど血は流れず、赤い肉と白い骨が奇妙なほどくっきりと見えた――。

(これは……未来視か)

 意識が戻る。
 数分間は向こう側≠垣間見ていた感覚ではあるが、実際は一秒にも満たない。
 卜占に携わる陰陽師には稀にこのような『天啓』が降りることがあり、法眼は我が身に起きた異常をすぐに認識し、取り乱すことはなかった。
 問題は、その内容だ。

(カートは、カートの死は運命づけられているというのか? 俺はこいつを救えないのか!?)
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