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『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
魔人変生
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用するようで、距離感や平衡感覚を狂わせる。
 こうなると空中浮遊はかえって危険だ。今のように地面に激突しかねない

「ならば霧自体を払うのみ。ハァァァーッ!!」

 『宇宙の騎士テッカマンブレード』のアフレコ中にマイクをニ本破壊できる程の音量で叫ぶと、上空に熱気を放つ灼熱の炎塊が生じるとともに突風が吹き出した。
 霧が発生する原因のひとつは気温が下がることで大気中の水分が飽和状態になることだ。
 気温が上がるか飽和状態の空気を飽和していない空気に入れ替えることで晴らすことができる。
 実際に朝霧は太陽が顔を出すと急に消えてしまうし、山や谷の霧は風によって散らされることが多い。
 温度を上げる。大きな空気の流れを作る。
 シュトロームはこのふたつを同時に実行したのだ。
 魔の霧はたちまち雲散霧消し、シュトロームの行く手を遮るものは無くなった。

「ふふふ、こういう搦め手、嫌いじゃないですよ。キイチ=ホーゲン、いよいよ欲しくなりました。しかしそうなると困りましたね。アイゼルさんがうっかり殺してしまわなければよいのですが……ん?」

 正面玄関に続く道の両脇にはいくつもの彫像が建てられていた。カートの家庭教師としてリッツバーグ邸に幾度も足を運んでいるシュトロームはその数が増えていることに気がついた。
 魔力感知(センス・マジック)を発動させるが、特に異常はない。

「ふむ……」

 警戒を怠らずその前を通った瞬間、彫像が突如として動き出した。

「悪意や敵意に反応して侵入者を迎撃する守護者(ガーディアン)。しかも普段は【隠蔽(シースルー)】が施されていて見抜くのは困難。素晴らしい!」

 称賛の声を上げつつシュトロームは瞬時に数十もの魔法(マジック)(ミサイル)を展開させ、応戦した。圧縮された魔力の塊は板金鎧(プレートアーマー)を貫くボウガンの矢すら凌駕する威力と速さを備えている。守護魔像(ガーゴイル)は容赦なく破壊され、瓦礫と化した。

「いい。凄くいい! エクセレント! こういう術の使える人材が欲しいのですよ。ああ、アイゼルさん。キイチのことを殺さないでくださいよ」

 昂る感情を表情には出さずに呼び鈴を鳴らして使用人を呼ぶと、中に入る。

「これはシュトローム先生、お久し振りでございます」
「ええ、お久し振りです。ここに来るのはカート君が学院の試験を受けて以来ですね」

 かくしてカートはシュトロームの手で最終調整を施され、魔人と化すこととなる。



 馬を駆り、おっとり刀で駆けつけた法眼は自らが施した守護の呪術の数々が破壊されていることに舌打ちをする。

「もどかしいな。きちんとした触媒さえあればこちらの世界でも充分な結界を構築できるのに」

 邸の窓が内側から壊され、
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