巡る季節が奏でる出会い
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ってくれたんだろ? だったら――」
「違うわ」
引率のトレーナーはぴしゃりと否定する。本心から言っているであろうことを察し、巡が戸惑う。
「半年前からポケモンは貰ってたって聞いたから、今のはあんたたちが現時点でどの程度対応力があるか見たかっただけよ。どれくらい面倒見ないといけないのかわからないと仕事上困るし。結局まともに見れたのは一人だけだったけどね」
「そ、そうなのか?」
「奏海……だったかしら。あんたはモンスターボールはすぐ取り出せる場所に持っときなさい。スーツケースの中に閉まってたら野生のポケモンとも戦えないわよ」
「は、はい……」
「……巡、はまあ悪くはなかったわ。ただ、知識は弟に頼るんじゃなくて自分で持ちなさい。いつでも家族が傍にいるわけじゃないんだから」
巡、と名前を呼ぶ時何かためらいがちになった気がした。その理由はわからない。
「明季葉って子は……ポケモンって言うのは見た目とは裏腹に凶暴な奴もいるから、外見で油断しないようにしなさい。ヒトモシが普通の炎で焼いてたら死んでたかもってことを忘れないで」
「……うん、油断した。気を付ける」
「それじゃあ、明季葉が回復したら出発しましょう。……いいわね? 私はあの二人とまだ話すことがあるから」
三人にそれぞれ指摘をした後、引率のトレーナーは踵を返しいまだに慄くように彼女を見るこの家のおじさんとおばさんの方を向く。巡が慌てて待ったをかけた。
「待って待って! ……お姉さんの名前は?」
「……涼香よ。それと、引率のトレーナーといっても私はやりたくてこの仕事をしてるわけじゃないから……自分の身は自分で守れるようにしなさい」
「わかったよ、俺ポケモントレーナーとして強くなって、いつか姉さんより強くなるから!」
「……姉さんはやめてくれないかしら。涼香でいいわよ」
「ええっ、でもそんな年上のお姉さんに向かって親しげすぎるというか距離が近すぎるというかなんというか」
痛みを堪えるような声で言う涼香に、顔を真っ赤にしてゴニョニョのように小さな声で呟く巡。しかし何かを思いついて尋ねる。
「そうだ、じゃあじゃあ、涼姉って呼んでもいいかな?」
「はあ……いいわよ。奏海と明季葉も姉さん以外なら呼び方は自由でいいわ」
「では僕は普通に涼香さんで……」
「涼香、でもいい?」
「ええ。別に敬ってもらうような働きをするつもりもないし……ともかく、これからポケモントレーナーとして旅をするんだから、各自しっかり心の準備をしておきなさい」
巡達に背を向けたまま言い、今度こそ離れていく。その背中を見ながら、巡はポケモントレーナーとして旅をすることについて改めて考え始めた。
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