第百七話 善政が招くものその十一
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「そして紀伊全土をだ」
「掌握するっちゃな」
「そうしないとだ」
「この度は兵を退かないっちゃな」
「そうだ、必ずだ」
英雄は愛実に強い決意を以て述べた。
「この紀伊をな」
「領土に組み入れるっちゃな」
「全てな、そして紀伊も治める」
「そしてその中で」
「忍達、高野山もな」
「組み入れるっちゃな」
「必ずな」
そうするとだ、英雄は強い声で言い切った。
「そうする」
「それがいいっちゃな」
「兵を出しているが」
それでもというのだ。
「戦にならないならな」
「本当に最善っちゃな」
「そう思うからな」
「このままっちゃな」
「戦わないで紀伊一国を手に入れられるなら」
「本当にいいっちゃ」
「兵を動かすにも手間と銭がかかる」
それもかなりのものがだ。
「それだけ力を使っている、しかし戦はな」
「余計にっちゃな」
「力を使うしだ」
それにとだ、英雄はさらに言った。
「万が一ということもある」
「そうそう、それぜよ」
当季は英雄の今の言葉を指差す様にして言ってきた。
「戦は万全を期してもぜよ」
「敗れる時もあるな」
「敵も必死じゃしのう」
戦をするならというのだ。
「そして時の運ぜよ」
「それもあるな」
「それで負けることもあるぜよ」
「だからだ、戦は俺もだ」
「出来るならしたくないんじゃな」
「何度も言うがな」
その話の通りにというのだ。
「俺はだ」
「戦はせんならじゃな」
「万全だ」
まさにというのだ。
「それでだ、高野山や忍者達についてもな」
「戦はせんのう」
「そうだ、だが魔物はな」
この者達はというと。
「紀伊は多いというしな」
「山が多いきにのう」
「倒していく」
「そうして民の不安を取り除くんじゃな」
「そうもしていく、その際だが」
魔物を軍勢で以て退治する、それならと言うのだった。
「俺達が自ら兵を率いてだ」
「山に入ってじゃな」
「十人か二十人程に分かれてな」
そのうえでというのだ。
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