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戦国異伝供書
第四十三話 関東のことその十四

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「あと二千、一万は置けた」
「ここにな」
「上田がなければ」
 そこが武田の領地でなければというのだ。
「そうなったがのう」
「言っても仕方ないがのう」
「上田はどうしても気になる」
「だからな」
「ここには精一杯集めてもな」
「八千で」
 それだけでというのだ。
「この八千でな」
「戦うしかないのう」
「今はな、言っても仕方ないが」
「うむ、ならな」
 小笠原も応えた。
「何とか戦い」
「そのうえでな」
「武田の軍勢を退けるとしよう」
「若し敗れれば」
 村上はあえてその時のことも話した。
「我等はな」
「後がなくなる」
「そしてだ」
「葛葉城か砥石城に籠城してな」
「戦うしかないが」
 それでもとだ、村上はさらに話した。
「しかしな」
「それをしてもな」
「そこまで追い詰められると」
 どうにもとだ、村上はさらに言った。
「打つ手がないわ」
「左様じゃな」
「長尾殿に援軍を頼むか」
「その時はか」
「幸いわしはあの家につてがある」
「それはわしもじゃ」
 小笠原も言ってきた。
「よく文を交えておる」
「そうか、ならな」
「若し危ないならな」
「長尾殿に助けてもらうこともな」
「考えておこう」
 こうしたことも話してだ、そしてだった。
 両家も戦の用意に入った、両軍は今信濃の北をめぐって雌雄を決さんとしていた。


第四十三話   完


                2019・3・24
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