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戦国異伝供書
第四十三話 関東のことその十三

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「要は突進させねばよい」
「敵としては」
「足軽が多くともな」
「槍ですな」
「そうじゃ、槍を前に幾重も出せばな」
 それでというのだ。
「馬は進めぬ」
「そうなりますな」
「だからじゃ」
「迂闊には攻めぬ」
 兵はこちらが二倍半多いがというのだ。
「それでもな」
「そうしますな」
「では二万の軍勢でな」
「これから戦いますな」
「そうするとしよう」
 こう言ってだ、晴信は今は陣を整えてそのうえで迂闊には攻めなかった。村上と小笠原も武田のその動きを見てだった。
 堅固な陣を敷いて動かなかった、そしてだった。
 村上は小笠原に本陣で話した。
「ここはな」
「うむ、迂闊に攻めずな」
 小笠原も真面目な顔で応える。
「敵が諦めて退けば」
「それでいい、若し隙があれば」
 武田の軍勢にというのだ。
「その時にじゃ」
「攻めるな」
「とかく今はな」
「この様に守りを固めてな」
「攻めぬ」
 自分達からはというのだ。
「川を渡られたならば」
「こちらは数が少ない」
「八千じゃ」
「敵の数は二万」
「兵の数は全く違う」
「これで戦ってもな」
 それこそというのだ。
「正面からだとな」
「勝てるものではない」
「ましてあいてはかなりの騎馬隊もある」
「ならばな」
「守りを固め」
 そうしてというのだ。
「敵が攻めてもな」
「じっとすることじゃな」
「亀の様に」
 甲羅で身体を覆われたこの生きものの様にというのだ。
「そうしていよう」
「それではな」
「ですが」
 ここで小笠原家の家臣の一人が言ってきた。
「上田からです」
「うむ、あちらからな」
「何かとです」 
 こう言うのだった。
「攻めようとです」
「してくるのう、だからな」
 それでとだ、小笠原は自身の家臣に眉を曇らせて話した。
「隙を見せられぬ」
「あちらについても」
「おそらくじゃ」
 小笠原は家臣にさらに言った。
「我等が隙を見せればな」
「上田からもですな」
「攻めて来る」
 間違いなくというのだ。
「そうなるからじゃ」
「だからですな」
「そちらにも気をつけるのじゃ」
 絶対にという言葉だった。
「よいな」
「わかり申した」
「そちらにも兵を割いておるしのう」
「結果としてな」
 村上も小笠原に言ってきた。
「そのせいでじゃ」
「ここにもな」
「八千の兵しかじゃ」
「ここに集められておらぬな」
「銭をありったけ使って兵を雇い入れたが」
「それでもな」
「八千じゃ」
 村上はまた兵の数を言った。
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