第百四十五話
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第百四十五話 十時に飲んでから
軽食と共に赤ワインをそれぞれ一本空けた、その後でだった。
カーミラは雪路を連れてそのうえで店を出た、支払いはカーミラが行ったが雪路はどうかという顔で彼女に話した。
「あの、お金は」
「あるというのね」
「ですから今も」
「気にしなくていいわ」
カーミラは自分の横にいる雪路に微笑んで答えた。
「今日はね」
「ホテルの時と同じですか」
「私はお金に困っていないから」
「先程言われた通りですね」
「財産があるから」
それでというのだ。
「昔からのそれがね」
「昔からですか」
「そう、オーストリアにいた時から」
「オーストリアの方ですか」
「ええ、その時からね」
オーストリアといっても何時のオーストリアとは言わなかった、そのうえで雪路に対してさらに語るのだった。
「資産を持っていてそれは増えていってるから」
「今も」
「これ位はね」
平気な、何でもないといった顔だった。
「気にしないで」
「しかも減らないのですね」
「増やしてくれているから」
使い魔達がそうしてくれていることは言わなかった。
「だからね」
「心配無用ですか」
「そうよ」
まさにという返事だった。
「だからね」
「気にしないで」
「そしてね」
そのうえでと言うのだった。
「楽しんでね」
「忘れる為に」
「忘れて新しい一歩を踏み出す為に」
「その為にも」
「今は気にしなくていいわ」
金のことはというのだ。
「それでお昼の場所に行くまでに」
「どうしますか?少し時間がありますけれど」
「近くの美術館に行きましょう」
カーミラが次に勧めた場所はこちらだった。
「そちらに行きましょう」
「美術館ですか」
「ええ、そちらにね」
こう雪路に言った、そしてだった。
カーミラはタクシーが傍を通ると手を挙げて呼び止めた、そうして二人で車内に入って運転手に行き先を告げた。
第百四十五話 完
2019・3・29
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