EX回:第76話<孤独な戦場>
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隊の指揮官……司令という立場だと人(艦娘)の生死ぐらいでは、いちいち感情を動かしてられない」
「……」
「毎回、感傷的になってたら、こっちが倒れるからな。『心の防護壁』……って。そんな自分も、どんどん国家の『戦闘機械』になりつつあるんだよ」
彼はふと悲しい表情を見せた。私は静かに頷く。
「そうだな」
それは否定しない。私も彼も同じ気持ちなのだ。
「正直怖いけどな……」
視線を落としたブルネイ司令は再び押し込むように食べ始める。
「戦場の狂気か」
指揮官になると誰もが直面する気持ちだ。江田島の任務過程でも、そういう授業があった気がした。
(私だって軍隊に居る以上、そして生き延びて居れば……いずれは、そうなっていくに違いない)
鳥肌が立つ想いだ。
そのとき向こうから『キャッキャ』と笑いながら食事をしているの潜水艦娘たちの姿が目に入った。さきの夕立も一緒に笑っている。
それを見ながら私は呟いた。
「でも艦娘たちに特攻だけは、させたくない」
手を止めたブルネイ司令は言う。
「あのイ401たちも、そうだ。決して今日の事件に対して鈍感なわけじゃない」
「え?」
驚いた私に彼は遠い目をして続ける。
「俺も潜水艦……実物も艦娘も扱ったことあるけどな。アレってのは独特なんだ」
「……」
「潜ってしまえば艦の外は真っ暗で高気圧で脱出も出来ん。その密閉された空間で『いつ何処から突然攻撃されるかも知れない』……っていう不安と孤独。それを耐え抜いて来るんだぞ」
彼は一息ついて諭すように言った。
「ましてや艦娘の潜水艦だとな、それを直接肌で感じンだよ。分かるか?」
私は少し硬直した。
「スマン……潜水艦は経験ないし。美保には潜水艦娘も少なくて」
ちょっと釈明をした。彼は気に留めずに続けた。
「ああ、そうらしいな。だったら、この際、覚えとけよ」
ブルネイ司令は噛み締めるように、そして一気に言った。
「潜水艦は単独行動が多い。そして特殊な隠密行動も少なくない。それでいて通信は届きにくい。現場の状況が目まぐるしく変化する中で自分で判断することを迫られるんだ。だから軍隊でも結果的に扱いにくくなる連中が多いが。でも彼女たちなりに必死に全力を尽くてんだゾ。あいつらだって決して他人事とか無視とか好きで反抗してるわけじゃない。分かってンだよ……だから、そこんトコはキチンと理解してやれ」
「あ、ああ……」
その気迫に圧倒されたが彼自身も自分に言い聞かせている感じだ。、
私は再び向こうの席を見た。その癖のある潜水艦娘たちと、すんなり打ち解けられる夕立か。そんな彼女たちを見ていて私は気付いた。
(あいつ(夕立)って実は全部分かって敢えて知らないフリ、傷ついてないフリをしているのか
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