夢も未来もない旅立ち
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ポッポやスバメたちの鳴き声が聞こえ始める早朝。涼香はフレンドリィショップのアルバイトを終えて自宅の小さなアパートに入る。時期はポケモンリーグの開催間近、本格的な夏が始まるというのにパーカーのフードを被って、視力が悪くもないのに眼鏡をかけている。もしそのサングラスの下の目を見た人間がいれば、こう思うだろう。若い女の子なのに、なんて淀んだ眼をするのだろうと。
玄関で靴を脱ぎ散らかし、カップ麺の容器が放置された台所を通って、テレビの電源をつけることもなくそのまま固いベッドになだれ込んだ。勢いがつきすぎて少し痛かったが、どうでもいい。
涼香は一人暮らしで、一緒に暮らすポケモンはいない。このアパートはポケモンとの同居は禁止だし、彼女は自分の意思でここを選んだ。隣町に家族はいるが、もうずっと会っていなかった。会えなかったのだ。
レジには立たず、商品の仕入れと点検を行うだけの退屈な仕事を終えた彼女は朝食を取ることもなくそのままベッドで寝転がる。決まった時間に食事を取るなどという習慣は、とうの昔に崩壊していた。ここに来てから、もう何キロ痩せただろう。以前ポケモントレーナーとして旅をしていた時の、女の子らしくも鍛えられた立派な体は、怠惰な生活によって見る影もなく衰えていた。
サングラスを外し、安っぽいチノパンを脱ぎ捨てる。もうこのまま寝てしまおうと思った時、ポケベルの画面が光った。涼香に連絡を取ってくる相手など、迷惑メールの類くらいだ。だが、写った相手に涼香は少なからず驚く。
「四葉……」
表示されたクローバーのアイコンは、涼香の親友だった少女からであることを示していた。メールのメッセージは、こう書かれている。
『あれから一年経ったね。大事な話があるんだ。今日の夕方、君の家に行ってもいいかな?』
もう一年か、と思った。だがそれよりも、何故今更彼女が自分と会いたがるのかがわからなかった。
だって自分は、一年前彼女を裏切ったのだから。
あの時の恨み言か。堕ちた自分への嘲笑か。それとも、友人としてやり直そうとでも言ってくれるのだろうか。意味のない想像をしながら、涼香の意識は沈み、その脳は一年前の記憶を映し出した。
涼香と四葉の目指したポケモンリーグ。予選を勝ち抜き、トーナメントへの出場資格を得た二人の少女がポケナビで通話している。
「ついに二人ともここまで来れたわね、四葉」
「うん……ここまで長かったよ、涼香」
涼香と四葉は、同じ町で育ち同じ日にトレーナーとして旅立った友人でありライバル同士だった。有り余る元気でそこかしこに寄り道しながらポケモンを鍛える涼香と、体があまり強くないため最短、最高効率でポケモンを鍛える四葉。
旅立つ時点で優
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