夢も未来もない旅立ち
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ものとは違う、新品の物。これがあれば、公的にはポケモンをバトルのために所有することが許される。ジムバッジを全て集めれば、リーグ挑戦も可能だ。
「君にもう一度、この地方を旅してほしい。ただし一人じゃなくて……とある新人のトレーナー達と一緒にね」
「新人トレーナー……?」
「そうだよ。チャンピオンになってから一年。僕は旅をして感じたトレーナーとして各地を歩く上での問題点の改善に努めた。涼香と会話したことも参考にね」
ポケモントレーナーとして旅立つ人間は研究所でポケモンを貰って一人で旅をするのが一般的だ。8つのジムを、ポケモンを捕まえ育てながら巡り、最後はリーグの挑戦を目指す。大体の地方と同じシステムに準拠している。だが一方でポケモンという大きな力を持ち責任を持って育てること、子供が一人で見知らぬ場所を歩く事には様々な危険が伴う。涼香も旅をして危ない目に合ったことや一歩間違えば死んでいたかもしれない出来事はあった。この地方におけるポケモンリーグのチャンピオンの権力は絶対に等しい上、トレーナーとして旅をした当事者であるなら鶴の一声で決定できることも多いのだろう。
「その一環として、新人トレーナーに地方を回ったことのあるトレーナーを一人つけることを決めたんだ。それを涼香にお願いしたくてね」
「……ふざけないで、なんで私が」
かつての親友……否、自分からすべてを奪い弟の仇となった相手をを睨みつける。気の弱い者ならその強い視線に怯むだろうが、四葉はペットのニャースに軽く引っかかれた程度にしか思っていない。
「なんで、は意味がないんだよ涼香。僕は君にこそ頼む理由がある。一応チャンピオンとしての権限もあるし、涼香は前科持ちだから断るなら今度こそ刑務所入りだ。僕が君を貶めた理由も教えられない。……それは嫌だろう?」
聞き分けの悪い子供を窘めるように四葉は言った。ショックと悲しみと怒りと不甲斐なさで頭の中がドロドロに溶けそうになりながら、涼香は呟く。
「親友だって信じてた時も、裏切られた後も……あなたの掌の上で踊るしかないのね」
「引き受けてくれるってことだよね。じゃあ明日の昼、僕と君が旅立ったあの研究施設に向かっておくれ。話は通してあるから」
昔と何ら変わらない、友人に対して少しお使いでも頼むような調子の四葉。自分を裏切って、弟を死なせて、今まで放っておいてなんでもない顔をしているのが自分の親友であるという現実にようやく、理解が追い付き始める。冷え始めた思考で涼香は言う。
「……教えてくれないなら、私は憎むわ。四葉の心を見抜けなかった馬鹿な自分を。まんまと罠に嵌まった自分の心の弱さを。そして何より弟を殺した四葉、あなたを……許さないから! 私はあなたに復讐する! ……それでいいの?」
「そう……いいよ。僕の
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