夢も未来もない旅立ち
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うかわかるのかい? 嘘でも何でもいいから納得したいのかな? 一番の友人に裏切られだれより大切な弟くんが死んでしまった理由を」
四葉の言葉が重く、念力以上にのしかかる。裏切られたこと、弟が死んだこと。それは四葉自身の意思で行われたし、自分はそれに気付くことが出来なかったことを。
「こんなふうに騙されて悔しいよね。涼香はずっと僕のことを見下してたんだから」
「何を言ってるの……?」
「自覚があるのかないのかは知らないけれど、君は弟のことも、僕のことも、大事にしているようで下に見ていた。頭はいいけど自分がいなければ四葉は何も出来ないみたいなこともよく言っていたよね」
四葉に違うと言おうとした。だけど否定できなかった。体の弱い彼女のことを心配していたのは事実だ。だけど自分が守ってやらねば危ういと思っていたその心に、見下す気持ちがないなどと言えようか。
何より涼香に今の発言を否定させなかったのは、四葉の浮かべる表情だった。普通、自分が見下されていると思って気分のいい人はいない。涼香ならはっきり怒りを示すだろう。でも、今の四葉は見下されていたと口にしながら、それを慈しむように笑っていた。
「それは……でも、そう思ってたならあんなことしなくても直接言えばよかった! そうすれば私だって改めてあげられた! なのに……」
「心配いらないよ。僕はそんな涼香が大好きだったし、今でも大好きさ。それだけは事実だよ」
うっすらと微笑を浮かべる四葉は真剣だった。長年の付き合いから、少なくとも嘘を言っているわけではないことを直感的に理解してしまう。だからこそ訳が分からない。でも四葉は教えてくれなかった。今の涼香には、真偽を確かめるすべがないから。涼香は無力さと悔しさに泣きながら
「ならせめて教えて……あの日から一年経って私にそのことを伝えた理由は何?」
「ふふ、涼香は頭はあまりよくないけど考えることは嫌いじゃないからね。きっとそう言ってくれると思ってた」
単に裏切りたかっただけなら、もっと早く教えても良かったはずだ。この一年間、自分の命を絶とうかと思った回数は一度や二度ではない。今日を迎えるまでにこの世を去っていた可能性もある。あるいはずっと教えなければ自分で罪を犯したと感じ続け苦しんだはずだ。なら今教えたのは理由があるはずだ。だがこの疑問も、四葉の掌の上らしい。いや、ここに来てからの会話は全てそうなのかもしれない。一年前も彼女の思うがままに不正を働いてしまったのだから。
「涼香、一番の親友である君に頼みがあるんだ。……これを受け取ってくれ」
「これは……トレーナーカード?」
四葉は一枚のカードを倒れた涼香の眼前に投げる。涼香が目を向けると、それはトレーナーとして旅することを認めるトレーナーIDだった。昔もらった
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