夢も未来もない旅立ち
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何よ!だから『涼香は悪くない』とでも慰めるの?あなたのことも自分のポケモンのことも、全部全部裏切ったのに!!」
堰を切ったように、もうずっとあげていなかった大声を出す。喉が割れそうだったが、気にしていられない。昔の四葉は、熱くなりすぎて度が過ぎた行動をする涼香を庇うことがしばしばあったし、それに昔は助けられてきた。だけど、もうどうにもならない。
「まあまあ落ち着いてよ。お楽しみはこれからさ」
「どういう、ことよ」
涼香の激情を、心の底から楽しそうに、昔ポーカーで負けそうになって困る自分を見ていた時のような、でもその時よりずっと楽しそうな目で見ている。
「ではそんな涼香に、もし対戦相手がわざと自分のモンスターボールを転がしたとしたら?」
「え……?」
意味がわからない。あの時四葉は席を外していた。そもそも、何のためにするというのか。
「対戦相手が席を離れる前、のぞき見を示唆するような発言をしていたとしたら?」
理解できず困惑を深めるばかりの涼香に対し四葉の笑みが深くなる。昔の目と似ているのに、見たことのない表情。見たことのない四葉。
「そもそも。涼香が弟と決勝戦前に会話したこと自体偶然ではなかったとしたら……?」
サイホーンに足し算を教えるように語り掛ける四葉。一瞬、涼香には四葉の言っている意味がわからなかった。脳が理解することを拒否していた。
あの時ボールが落ちたのは、地震のせいだ。だけどポケモンの力があれば地震を起こすことなど容易に出来た。トイレに行く前、のぞき見なんてしないでくれとも言っていた。
涼香が自分の弟と会話をしたのは自分の意思だ。だけどそれを勧めたのは四葉に間違いなかった。
「まさか……私をはめるために、わざと……?」
理解してしまっても、信じられなかった。だって、四葉は、自分の、一番の、親友で。病気がちで変わり者だったから村の子供たちに馴染めなかった四葉を守ってあげていたのは、自分なのに。
「ははっ、やっぱり気づいてなかったんだね……だけど笑えるじゃないか。あの一件以来涼香はポケモンバトルの表舞台から追放。一方僕はキヤリーグ地方のリーグチャンピオン。昔に比べて随分立場が逆転したじゃないか?」
「四葉……なんで……なんでよっ!!」
涼香は細くなった腕を振り上げ、彼女に拳を振るおうとする。だがまた涼香の体が淡い光に包まれる。念力で動きを止められ、地面に這いつくばる。騙されていた悔しさ。弟の無念。今までの自分への罪悪感が全て四葉への疑問へと変わる。
「暴力はいけないね。さて、涼香はこれからどうしたい?」
「答えて……なんで、あんなことをしたの!」
「この状況でなんでなんでとはあまり賢くないね。答えたとしてそれが真実であるかど
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